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月刊『日本の進路』2005年5月号
米国政府は米国産牛肉の輸入再開圧力を強め、日本政府は輸入再開に向け動いている。日本と同様のBSE安全対策が確保されるまで輸入再開をしないように求める署名を取り組んでいるJA長野県青年部協議会会長の熊谷憲司さんにお話を聞いた。文責編集部。
アメリカ産牛肉の輸入再開について、JA長野県青年部協議会とJA長野県女性協議会では、日本と同様なBSE安全対策が確保されるまで輸入再開しないよう求める署名活動を行っています。三月末に集約し、国に提出する予定です。三月末というのは、各青年部が総会をやる時期なので、盟友に呼びかけ、多くの署名を集めたいと思っています。
日本では、二〇〇一年に牛海綿状脳症(BSE)が発生して以降、特定危険部位の焼却処分、肉骨粉の飼料の使用禁止、全頭検査などの安全対策がとられ、消費者の信頼回復が図られてきました。
一昨年、アメリカでBSEが発生したことに伴い、アメリカ産牛肉の輸入が禁止されました。最近、アメリカからの要求もあり、輸入再開へ向けた動きが強まっています。いつまでも「輸入はダメだ」と言っていても、「牛丼」というのは人気商品の一つですから、ファンの方にとって気の毒だという気持ちもあります。しかし輸入再開には、日本と同じような安全対策が保障できる体制が確立されなければなりません。日本が求める全頭検査や特定危険部位の除去について、アメリカは拒否しています。日米政府間では、昨年十月、生後二十カ月以下の牛に限って輸入再開することを合意しました。
しかし、二十月齢以下だったら安全だという保証はありません。さらにアメリカは、「二十カ月以下」を「三十カ月以下」に緩和することも要求していますが、日本国内では、生後二十三カ月や二十一カ月でも感染が疑われる牛が見つかっています。
日本では、国内で生まれたすべての牛に十ケタの識別番号を付ける「牛肉トレーサビリティー法」によって、牛の出生年月日や生産者など牛肉の履歴を確認できるようになっています。しかし、アメリカでは生産履歴がきちんとされていないため、いつどこで生まれた牛なのかも分からない。肉質で月齢を判断するという。これでは「二十カ月以下」といわれても、それが本当なのかどうか、確かめようがありません。BSEに感染した牛が、アメリカかカナダのどちらで発生したのか分からないという報道もあります。アメリカのBSE対策には多くの疑問が指摘されており、不安を覚えます。
先日、消費者との懇談会を行いました。消費者の方は、国産の農産物については栽培履歴があるので安全だと感じているということでした。しかし、食肉に関しては産地偽造問題やBSE問題などがあり、野菜以上の関心があるという話でした。
いまアメリカからは「輸入再開」の圧力が強まっています。アメリカ産牛肉輸入再開に合わせるように、日本国内の全頭検査体制についても見直そうという動きも出てます。現在、「食品安全委員会」で検討されています。そんな中で、島村農相が「全頭検査は世界の非常識」と発言しましたのでJA全青協(全国農協青年部協議会)として抗議しました。アメリカの圧力に押されて安全対策がいい加減にされることは認められません。
そのためにも、日本と同様なBSE安全対策が確保されるまで輸入再開しないよう求める署名活動を行っています。食の安全の問題ですから、消費者のみなさんも関心をもっていただいて、もっと声をあげてほしいと思います。 (文責編集部)