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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年11月号

小泉内閣の公益法人改革のもたらすもの

大槻勲子


 政府は二〇〇三年の閣議において「わが国において、個人の価値観が多様化し、社会のニーズが多岐にわたってきている。しかし、画一的対応が重視される行政部門、収益を上げることが重視される行政部門、収益を上げることが前提となる民間営利部門だけでは、様々なニーズに対応することが困難な状況になっている。これに対し、民間非営利部門は、このような制約が少なく、柔軟かつ機動的な活動を展開することが可能であるために、行政部門や民間営利部門では満たすことのできない社会のニーズに対応する多様なサービスを提供することができる。その結果として民間非営利活動は、社会に活力や安定をもたらすと考えられ、その促進は二十一世紀のわが国の社会を活力の満ちた社会として維持してゆく上で極めて重要である」との認識を示した。
 新しい制度を創設する基本的枠組みを検討する有識者会議が設置され、二〇〇四年七月末までで一応の論点整理と検討が終了し、答申が十月末頃に行われるとのことであった。
 独立行政法人に関する有識者会議(座長・飯田亮セコム最高顧問)は九月二十二日、首相官邸で初会合を開き、来年度末までに見直す予定の五十六の独立行政法人の統合、整理・合理化の検討を行い、その統合案が九月二十三日の新聞紙上で報道された。内容は、
 二〇〇六年三月までに見直す予定の五十六法人のうち二十二法人を再編・統合すべきだとの意見で一致した。各所管省庁ヒアリングを通じ、統合の実現などを求める。有識者会議は「類似、重複業務は統合すべきだ」として統合案を示し、統合案は「さけ・ます資源管理センターと水産総合研究センター」「国立オリンピック記念青少年総合センターと、国立女性教育会館、国立青年の家、国立少年自然の家」等、「二十二法人を八法人・団体に統合、再編し業務を効率化する」との案を進めていくことになった、というもので本当に驚いている。
 私たち女性の社会教育関係団体の者としては、さっそく反対の声が、全国の女性団体からあがりました。
 独立行政法人・国立女性教育会館を単独の法人として存続し、青少年関連施設法人との統合に反対する理由は、一九七七年に国立婦人教育会館が設置されて以来、利用者の意向を汲み上げ、近県と遠隔地の格差をなくし全国的な女性の活動を拠点として、ゆるぎない存在となった。とくに国際会議、国際交流に際しては、情報関連システムの完備、宿泊施設、スポーツ、美術、工芸等総合的に活用できることで国際交流の実をあげ、唯一のナショナルセンターとして高い評価を得ています。
 一九九九年に「男女共同参画社会基本法」は、二十一世紀のわが国施策の重要課題と位置づけられているので、その実現に向けて、官民一体となっての実践の場として位置づけられている。研修・情報・交流・調査研究の機能を備える唯一の場として、ますます重要になっている。しかし、統合再編は補助金削減であり、これまでの活動が大きく後退する。ゆえに、単独の法人として存続することを望むのだと、いま全国から要望が出されている。補助金削減の統合再編であり、実体を知らない有識者会議では法人改革は難しい。市民と官との意識・認識のズレを感ずる。
 現在、二万六千ある社団法人、財団法人は、一八九六年制定された民法により、主務官庁の監督下に置かれている。有識者会議が新しい非営利法人制度を考えるとき、これら法人の取り扱いが問題である。公益法人改革は、その本来あるべき姿から検討を始めるべきではなく、弱者切り捨てのように取り扱われる改革の課題は大きい。