国民連合とは代表世話人月刊「日本の進路」地方議員版討論の広場トップ


自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年10月号

まちを破壊する超大型店出店計画
大阪市は大型店への土地売却撤回を

大正区商店会連盟会長 浅居秀一


 大店法が廃止され、大店立地法になって大型店出店が全国で相次いでいる。大阪市大正区ではホームセンターの大型店出店計画で地元商店街が出店反対に立ち上がっている。大正区商店会連盟会長の浅居秀一さんにお話を聞いた。

 突然、大阪市が大型店を誘致

 私たちがホームセンタームサシの出店計画を知らされたのは八月二十五日です。八月二十四日には大店立地法に基づく各町会長など説明会があり、われわれ商業団体には八月二十五日に説明がありました。そして八月二十七日には役所で環境アセスの縦覧が始まりました。まさに「寝耳に水」、むちゃくちゃな話です。
 これを進めているのは大阪市港湾局です。環境アセス縦覧が終わって一カ月したら契約(建物の土地は売却、駐車場は賃貸)に入るという状況です。「今回の出店計画は地元商業者と地元住民にとって死活問題だ」という内容の環境アセスに対する意見書を提出しました。
 大阪市が大阪湾を埋め立てしているのは何年も前から聞いています。後で分かったことですが、大正区鶴浜地区の埋め立ては当初は物流基地を整備する予定だったが、一九八五年に着工後、大阪港での貨物量が激減したため、九七年には陸遊館や植物園などの集客施設と住宅建設に方針転換した。しかし、総事業費三百四十億円を投じた埋め立てが終わった二〇〇一年夏には、財政悪化で集客施設計画も断念。大阪市は「少しでも元手を回収したい」と企業誘致(土地売却)に走り出しました。
 名乗りを上げたのは北陸を中心に量販店「ホームセンタームサシ」を展開する「アークランドサカモト」(本社は新潟県三条市)。計画によると大型ホームセンタームサシは、二階建て延べ売場面積は四万七千平方メートル、三千三百台収容の駐車場を整備するという。
 パンフレットには「巨大一店主義」と書かれています。先日、出店業者がきて「取扱商品は二十一万点」と豪語していました。「生まれる前から死んだ後までの商品を置きます」と。つまり、妊婦用品から仏壇まで販売する。そのうえ、ファーストフードやレストランなどの飲食店街、美容室や理容室などありとあらゆる店を出すという。
 われわれの住んでいる大正区というのは大型店が出店するようなまちではありません。大正区の人口は約七万三千人で減少しています。区の両側には川があって南側は大阪港に面しており、大正区に入って来るには四つの橋しかない。
 大正区の小売業売場面積の合計は五万五千平方メートルなのに、ホームセンター一店だけで四万七千平方メートル、区内の売場面積の合計の実に八五%以上という広さです。
 中小商工業者の振興をはかるべき行政が巨大大型店に土地を売却するというのはあまりにひどい話です。地元商店街に壊滅的な打撃を与える、まさに地元商店街つぶしです。

 地元商店街にとって死活問題

 実は平成十二年にも大型店出店計画(千島ガーデンモール)がありました。大店法の時代で、われわれは出店反対運動を展開し、三万人以上の署名と陳情書を提出しました。陳情書は市議会の文教経済委員会で審議され、全会一致で採択されました。また、当時の磯村隆文市長は「あまりに大規模で地元に悪影響がありすぎる」と意見書を提出。大阪府知事も意見書を提出。その結果、売場面積が四五%カット(売場面積一万二千平方メートル)されました。それでも影響は大きく、大型店が開店した平成十四年以降、二つの商店街では閑古鳥が鳴いています。
 今回は約四倍の売場面積です。人口が減少している大正区の地元商店街や商業者にとって死活問題です。商店街は何軒かが閉店すると、商店街としての機能がなくなり、商店街として維持できず、急速に商店街は衰退します。
 高齢化時代の中で、地元商店街では近所のお年寄りが利用してくれています。いまでも金物店がなくなり、スプーン一本買うにも困っています。商店街がつぶれたら、お年寄りはどこで買い物をするのか。
 市の財政にとっても、地元商店街が壊滅的になれば市への税収も減ります。出店業者は、雇用改善になると言っていますが、大型店が雇うのはパートばかりです。しかも大型店出店によって地元商店がつぶれれば逆に雇用問題は悪化します。
 また、区内の主要道路はいまでも交通渋滞や事故が多い。そのうえ三千三百台の駐車ができる施設ができれば、交通渋滞、騒音、排ガスなどの問題がひどくなります。
 われわれ商業者は、区の行事に協力してきました。例えば、「大正区民祭り」では区の要請で、もうけがないのに模擬店を出しました。区民が喜んでくれれば地元商店街も利用してくれるだろうと、精一杯の協力をしてきました。まちを支えてきたという自負があります。一方、大型店は「本社はここではないので」と協力しません。まちの発展のために協力している地元商業者をつぶしてまで、なぜ大型店を出店させるのか。

 大阪市は土地売却の撤回を

 四年前の経過があるのに、大阪市は開発計画の失敗のツケをわれわれ地元商店街を犠牲にして乗り切ろうとしています。絶対に許せません。
 関淳一市長は昨年十一月、「磯村前市長の市政の継承」「商店街振興」を選挙公約に当選しました。大阪市商店会連盟の会合でも「大阪市は商人のまち、中小商店のみなさんのためにがんばる」と約束。あの約束はウソだったのかと言いたい。関市長は前市長の意見書を遵守し、選挙公約を守り、商店街を崩壊させる土地売却計画を撤回すべきです。
 もう一つは地元選出の議員(府会議員一人、市会議員三人)は何をしているのかと言いたい。
 市民をいじめるような計画を市議会が承認したのかどうか。大正区選出の市会議員を呼んで言いました。「あなたたちは僕らの暮らしと命を守るべきではないか。こんな大型店が出店すれば地元商店街がどんな状態になるのか、誰が考えても分かること。なぜこんな計画に黙っているのか」と言いました。議員は「自分たちも最近聞いた」という。「膨大なお金をかけて埋め立てた土地を売却するという大問題が市議会で議論されないんですか?」と聞いたが返事はなかった。
 埋め立てが始まってから、いろいろ議論がありました。市会議員たちは集客施設ができるとか、住宅ができるとか、バラ色の話をしていました。われわれは公共施設を建てて、まちの活性化を図ってほしいと要望してきました。その結果が、地元商店つぶしの大型店出店ですから、よけいに腹が立ちます。
 大阪市と大阪市議会には「大型店への土地売却撤回を求める要望書」を出しました。九月十六日には、地元商業者が中心になって絶対反対の集会をやりました。「もし工事が始まれば、座り込んでも阻止する」と宣言しています。
 いまの大店立地法では、環境アセスさえ通れば、出店が容易な状態です。いわゆる「まちづくり三法」はまったく歯止めにならず、大型店出店が野放し状態です。しかし、今回の大型店問題は、地元の中小商業者や住民にとって死活問題です。市長や市議会を追及し、何としても大型ホームセンターの出店を阻止したい。       (文責編集部)