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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年8月号

経済教室

外資による日本企業乗っ取り(三角合併)

竹田四郎


 最近、三菱東京FGとUFJHDとの合併で総資産約一九〇兆円の世界最大規模のメガバンク誕生が予定されているようだ。山之内製薬と藤沢薬品の合併は成立したが、花王とカネボウの合併話は破談になるなど、ここのところM&A(吸収・合併)の話題が経済界でわき上がっている。〇四年上半期のM&A件数は前年同期比二二・四%増の一〇三四件、通年二〇〇〇件をこえそうな勢い。うち国内企業同士のM&Aが八〇五件、七七・九%だ。〇五年通常国会で商法改正(税制も?)で国境をこえた合併ができるようになると、〇六年から巨大外資による法人企業のM&Aが急進展しそうだ。
 企業を大きくするにはいろいろあるが、急速拡大の手法の現代版は、アメリカンスタイルのM&A、三角合併という株式交換によるものだ。夫々の企業価値による株式の交換比率を定めてのM&A等は、国内企業同士では実施されているが、国際合併は一部分を除いて商法上認められていない。これが米国からの要求(『日本の進路』五月号本山美彦論文参照)により実現されることになりそうだ。
 三角合併とは外国の企業が、日本国内に一〇〇%支配の子会社をつくり、それと日本企業とのM&Aをするもので、買収資金は外国にある親会社の株式または現金による。被合併の日本企業の株主は、株式交換により外国親企業の株主になるか、現金買収の場合は株主でなくなる。株式交換比率は、資本金額ではなく、純利益額によるようだ。それは株式市場における当該会社株式の時価総額によってきまる。同業種トップクラスの日米企業の株式時価総額の差は約十倍。単独では太刀打ちできない。米企業は株主総会にかわって、取締役会で企業合併・新株発行を決定できる。日本企業の市場価格が相対的に安い現在、米欧、とくに米資本は日本企業へのM&Aをしかけてくるだろう。あるいはヘッジファンドやアドバイザーをつとめる証券会社が合併対象の日本企業株価を引き下げるように操作するかもしれない。
 これまでの日本企業は、TOB(株式の公開買付=企業の乗っ取り)を防ぐため、株式の相互持合などで安定株主をつくる努力をしてきたが、バブル崩壊後は株価の低落で、評価損が資本を毀損する事態を引き起こすこととなり、株式の相互持合を解消する方向に進んだ。企業は、外国大企業のM&Aを防止する方法として、国内企業同士あるいは海外企業との積極的合併により営業利益をあげる道を模索する気運になっている。山之内・藤沢合併で青木藤沢社長は「海外の製薬会社の日本支社になるのはこのましくない」と述べているし、東京三菱とUFJの合併でも「このままではシティグループに買収されるかもしれない」と東京三菱関係者は胸のうちを明らかにしている。しかしながら小規模な者同士が合併したところで十倍以上の大企業にはかなわない。乗っ取られる可能性は高いと判断せざるを得ない。商法改正の慎重さが望まれるゆえんである。
 どんな企業が標的になるだろうか。株主に対して明確な成長戦略を提示できない会社。時価総額が低い会社。高くても一株当たりの株価収益率が低い会社など。売上高ではなく、総利益の何倍の株価をつけているかだ。
 海外企業の株式と交換した株主、とくに個人株主はその株式が海外でしか上場されていない場合は現金化できぬこともあり、交換対象となってくるものがどんなものか注意が必要である。また海外の株主は経営に口出しするし、気に入らなければ引き上げてしまう。