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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2004年1月号
計画発表から二十八年が経過した珠洲原発がようやく決着の日を迎えました。十二月五日午前九時、珠洲市役所を訪れた関電、中電、北電の三電力社長は貝蔵市長に対し「凍結」の方針を伝えました。解凍されない事実上の「断念」です。
電力会社自らの経営判断で撤退を決めた初めての原発計画といわれています。確かに電力需要の低迷や電力市場の自由化が電力会社の経営を直撃し、珠洲地点の必要性が低下したことも事実でしょう。しかしその背景には、これまでも、そしてこれからも立地を許さない地元の強固な反対運動があったことを是非認識していただきたいと思います。
振り返れば、地縁、血縁、様々な人間関係を引き裂かれる中で展開された二十八年にわたる寺家、高屋現地住民による反対運動、県評時代からの労組を中心とした反対運動、さらに一九八九年のからだを張っての立地可能性調査阻止行動以来、市内全域に拡大した市民運動がありました。それぞれの組織が力を合わせて取り組んだ数多くの反原発選挙では、市長選の勝利こそできなかったものの、県議選、市議選で議席を次々と獲得し、国政選挙でも影響力を発揮しました。現在の県知事も私たちが応援する中で初陣を飾っています。立地の決定的な歯止めとなる共有地運動も展開し、海を守る漁協の力強い反対運動もありました。これらの運動を市外、県外、多くの皆さんの支援をいただきながら展開してきた結果が今回の「断念」であり、心からお礼を述べさせていただきたいと思います。
もちろん、これからの課題もたくさんあります。電力会社やその関連会社が所有権を確保し、あるいは賃貸借契約などで確保している土地がたくさん残っています。「核のごみ捨て場」にならないよう引き続き監視が必要です。十二月市議会では珠洲市を核のごみ捨て場にしないよう求める請願が原発推進派議員によって不採択となっています。
深く亀裂の入った人間関係の融和も大きな課題です。決して生やさしいことではありません。推進の旗頭であった現市長は、原発誘致という長年にわたる失政に何ら反省もなく、見事な変わり身で三選に向け出馬表明をしました。彼の回りには「原発の代わりに何をしてくれるんだ」「断念の見返りに百億円を」などと、電力会社依存体質が染み込んだ人たちが大勢います。そんな彼らに擦り寄る融和ではいけません。私たちはこの二十八年にわたる運動を通じてたくさんのことを学びました。市長選無効訴訟の中でいかにこの地に民主主義が根付いていないかを。行政自ら住民を差別、選別し、人権感覚がいかに狂っているかを。環境との共生、地域の自立がいかに大切であるかを。「失われた二十八年」にしないためにも軸足はしっかりと定めなければいけません。
最後に珠洲原発断念の意義を確認しておきたいと思います。国策である原子力政策と民間企業の経営戦力が大きくずれてきました。今回の「断念」の直接の引きがねは建設中の志賀原発二号機でした。自由化と需要の低迷で当事者である北電はもちろん、電力の購入を持ちかけられた関電、中電までもが二号機の電気を持て余し、珠洲地点を抱える意味も余力もなくなったのです。ならば志賀二号機も止められるはずです。九電力全体でみるならば核燃サイクル路線も明らかにお荷物となっています。珠洲原発断念を志賀原発二号機の建設中止へ、さらに日本のエネルギー政策の転換につなげていきたいと思います。