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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年8月号
四月の統一地方選挙の争点の一つが合併問題であった。大阪の高石市では堺市との合併問題を争点として市長選、合併の是非を問う住民投票が行われ、合併反対を訴えた阪口伸六氏が六党の推薦を受けた現職に大差で勝利。住民投票でも合併反対が約七五%を占めた。新市長の阪口伸六氏に話を伺った。(文責編集部)
――合併問題が大きな争点になった市長選挙を振り返って、市民の選択をどう感じておられますか。
初登庁のとき全職員にも申しあげましたが、「四月二十七日は、高石市にとっても、地方自治にとっても歴史的な一日」だったと思います。それは地方自治体の存立にかかわる合併という重要な問題について、住民投票という手法で住民自らが町の将来を決定されたことです。約七五%の市民の方々が合併反対を選択された。あわせて市長選では「合併せずに自立再生を」と訴えた私の政策を選択された。
市長選挙と住民投票で、高石市の今後の方向性がはっきり定まったと感じています。
――昨年三月頃から堺市との合併の動きが活発化したようですが。
昨年三月の市議会で、「堺市・高石市合併問題研究協議会」が提案され、設立されました。これを契機に行政主導の合併の動きが加速しました。行政サイドからは合併を推進する立場で、いろいろな資料やデータが出されたり、説明会も行われました。行政側は「財政難だから合併するしかない」というのが最大の主張でした。
一方、市民団体からも、「合併推進」「合併反対」という立場で、いろいろなチラシや資料が出され、合併問題シンポジウム・フォーラム等も開かれました。当時、市議会議員であった私もメリットやデメリット、財政問題などを市政報告の新聞やホームページ等で情報提供を行いました。
――住民投票に対する市民の反応はどうでしたか。
住民投票と同時に行われた選挙戦(市長選、市議選)でも一番の争点は合併問題でした。
この期間、住民自身が合併賛成、反対の両方の意見を聞き、学習されたことが重要だったと思います。例えば、あるご年輩の方は推進と反対の両方のチラシやデータを袋に保管しておられ、「住民投票の時にもう一回見ようと思っている」ということでした。住民投票の長所だと思いますが、住民自らが双方の主張を学習され判断されました。住民自治にとって大事なことだと思います。
私自身は市議会議員を四期つとめましたが、常に市民の皆様の立場に立って活動してきました。市民の皆さんに私自身が活かされてきたと考えています。
――「平成の大合併」が進められるなか、全国各地を回られて調査、研究されたようですが、どんなことを感じられましたか。
私は市町村合併そのものを否定するつもりはありません。地域の実情をもとにお互いに発展しようという合併、なおかつ住民が賛成されている合併、住民のコンセンサスもきちんと得られた合併は、考えるところがあってもよいと思います。
しかし、合併特例法には「自主的な市町村合併を促進する」とうたっているのに、合併特例債など財政支援というアメと、地方交付税の削減というムチで、全国の市町村に合併を迫っているのが実際です。
この合併特例債は、合併後の公共施設の建設事業などを目的にしたものでかなりの巨額になります。合併特例法では、このうち七〇%を国が地方交付税で補てんしてくれ、自治体負担は三〇%となっています。国も地方も大きな借金を抱えて苦労している現在、たとえ三〇%といえども、合併特例債を使って新たな公共事業を実施すれば、子供たちの世代に新たな借金を残すことになります。
本当の意味での地方分権の推進、地域の実情や住民の合意形成を前提にした地方自治の確立という観点で合併論を考えていくべきだと思います。本当に地方が自立していくことが大事だと思います。
――第二十七次地方制度調査会の中間報告や国が進めている「三位一体の改革」について、どうお考えですか。
国から地方への補助金の削減、地方交付税の見直し、税源移譲の「三位一体」が議論になっています。地方が自立する上で財源の移譲は重要で、総論としては評価しています。
ただ、削減する補助金の種類であるとか、地方交付税を削減した場合の影響がどのくらいあるのか、また財源移譲の具体的な試算であるとか、そういうことをきちんと議論すべきだと思います。自立した地方自治体を支援していく形の改革を望むものであって、とりわけ税源移譲は重要です。全国市長会でもいろいろ提言が出されていますが、自由度の高い、なおかつ責任ある財源を地方にいただきたく、それが自治体の自立を促進するキーワードだと思います。中央に依存せず、自立した地方自治体にするためには、この税源移譲が重要なファクターであると思います。
●高石市長選挙の結果
当 22,559 阪口 伸六 新 人
11,645 寺田 為三 現 職
(投票率 75.55%)
●堺市との合併の意思を問う住民投票の結果
(投票率 75.56%)
合併に賛成 6,225 18.1% 合併はやむを得ない 2,617 7.6% 合併に反対 25,514 74.3%
堺市の人口 79.1万人
高石市の人口 6.2万人
さかぐち・しんろく
1956年高石市生まれ。1979年同志社大学経済学部卒。1987年から高石市議会議員を4期つとめる。1996年高石青年会議所理事長。2003年4月高石市長に。