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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2003年4月号
この度、『従属国からの脱却』を読む機会がありました。この本の前半では昨年七月に行われたシンポジウムの内容、後半では先日亡くなられた隅谷三喜男氏が座長をつとめられた「二十一世紀・日本の進路」研究会での議論の内容が収録され、最後に同研究会による具体的な提言の全文が収録されています。発言者はいずれも、研究や運動、実務の第一線で活躍する方々が顔を並べています。刊行から数カ月経った今、折しも米英軍によるイラク攻撃が強行され、ここでも小泉政権は当然のように米国追従の姿勢を続けています。結果として、これまで親日的であった、中東諸国の民衆と日本との関係を敵対的なものにすることにもなりかねません。日本の進路が厳しく問われている中で、切実な問題意識をもって読むことができました。
「日米安保条約を日米平和友好条約に」というこの本の主張は、高度成長期が終わって三十年、バブルが崩壊して十年以上経過した今こそ、真剣に考慮に値するものだと思います。日米安保体制の「恩恵を受けて」日本が繁栄を謳歌した時代は、とうに過去のものになっています。むしろ、日本の自主的で正常な国家としての発展が(経済面も含めて)、日米安保によって如何に実質的に妨げられてきたかが、この本の随所で説明されています。日本が今後アジアの国々と共生しながら、国民各層の利害を反映する発展の道を追求しようとする場合には、どうしても日米安保の問題は避けては通れません。「アジアとも対等、米国とも対等」の日本のヴィジョンを描くことの意義を、再認識する必要があります。
例えば、「日本には北朝鮮問題があるのでイラク攻撃に際しても米国に反対はできない」などと言う人が時々いますが、私は逆に北朝鮮問題においても、日本が米国に追従することの危険は大きいと思います。今回のイラク戦争と同じように、米軍が北朝鮮に一方的に軍事進攻しようとした場合にも、日本は黙ってそれを支援するのでしょうか。南北朝鮮の市民に多大な犠牲が発生し、日本にも直接・間接の影響が及ぶでしょう。この例一つとってみても、周辺諸国との協調による日本の自主的な対応が、本来求められているのではないでしょうか。そのためには、日本の自主的な行動を縛っている日米安保からの「卒業」が、最終的には必要になってきます。
目下のところ、国民各層による「イラク戦争反対」の声は日々高まっています。ただし、そこから今後の日本という「国」としての中長期的な進路を描くためには、一歩進んで「日米安保の終了」にまで踏み込まなければ、展望は開けてきません。このことを正面から主張する論者も政治勢力も少ない中で、沢山の方々に読んでいただきたい、刺激的な良著だと思います。