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自主・平和・民主のための広範な国民連合
『日本の進路』地方議員版36号(2007年8月発行)
7月29日投票が締め切られた午後8時、沖縄県のテレビ局各社は琉球朝日放送が8時、琉球放送、沖縄テレビは8時1分、NHK沖縄放送局は8時2分と糸数慶子氏の当確を伝えた。沖縄選挙区において野党統一候補(社民党、民主党、共産党推薦)の社会大衆党副委員長糸数慶子氏と自民公認・公明推薦の西銘順志郎氏の得票数はそれぞれ376,460票と249,136票、その差127,324票の大差であった。翌日の新聞の見出しは、「沖縄政策に不満噴出、白公支持層も取り込む」糸数氏勝因「教科書問題後押し」(7月30日沖縄タイムス)と報じた。
圧勝の背景には政治と金、年金問題、増税、格差など暮らしの問題をはじめ、憲法問題、さらに本県では、基地の機能・強化、そして沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題など特筆すべきものがあった。本稿では沖縄戦の歴史教科書問題を中心に報告する。
教科書検定は3月30日発表されたが、4月22日に行われた参議院議員補欠選挙ではこれほどの世論の後押しはなかった。補選後、市町村議会では臨時議会で、県議会では6月議会において歴史の改ざんに対して撤回を求める意見書を可決し、今日までに県内41市町村すべてで行われ、県議会においては異例の2度の決議を行っている。県議会初日に冒頭で決議した後、文教厚生委員会の県議団(私も)でその日のうちに上京し、文科省に出向き撤回要請をした。
マスコミ各社の取材は、基地問題とは異なり扱いは大きく、当日の朝日新聞の夕刊にトップ記事で掲載された。しかしながら、県議会に対する文科省の扱いは軽く、撤回できないの一言、その理由説明もない。一方、沖縄県では、すべての市町村議会、県議会が撤回を求める決議を行い、沖縄県民の総意となった。
(6月9日には、沖縄戦の歴史歪曲を許さない沖縄県民大会の実施、6月23日には沖縄戦没者慰霊祭がとり行われた。本県では、県民の4人に1人が亡くなったといわれる戦没者の御霊に不戦の誓いをするのである。)今回の参議院選挙で相手候補は(自民公認・公明推薦)この問題に関して政府にもの申す! と題して「去る沖縄戦では、日本軍の関与によって『集団自決』が起きたことは事実」中略、「今回の教科暮『日本軍関与』の削除・修正は体験者による証言を否定するもの」「沖縄戦の実相を風化させないために、政府に喝!」とチラシに掲載している。自公選出の国会議員が自分の側が出した検定にものを申し、喝を入れるとは何事か。説明責任こそ問われなければならない、と私は街頭演説で訴えたのであるが・‥。さらに沖縄県選出の国会議員は揃って、安倍首相、文科大臣に直訴し撤回要求をすべきであり、座り込みをしてでも県民の総意に応える行動をとるべきであると訴えた。県内的には県民の総意にそった言動をとり、国会においては、小泉、安倍内閣支持の一員では許されまい。
今回の糸数慶子氏の圧勝は、上記のメディアによると社民、民主、共産など推薦を受けた政党の9割前後を固め、無党派層の8割、さらに自民・公明支持層の3割弱が糸数氏に投票した模様と報じた。この沖縄的争点(県民の総意)は、教職員OBを立ち上がらせ、沖縄いや日本の将来に対する危機感を引き出し、教え子を再び戦場へ送らないという必死の願いが行動となった。一方、安倍政権における、沖縄切りすて政策も危機感を高めた。
沖縄県民はあの大戦で「軍隊は国民を守らない」という教訓を学んでいる。この教訓こそは安倍首相にとって戦後レジームから脱却するために消し去りたい事実である。日本軍の名誉回復と復活のためにも。「教科書や政治における沖縄戦の扱いは、日本全体の軍国化に直結していることであり、それは架空の脅威ではなく着実に追ってきている」(『世界』6月号『沖縄戦』とは何だったのか)。
筆者は、沖縄県議会文教厚生委員として、7月6日渡嘉敷島と座間味島へ集団自決の現地調査に行った。その際、座間味島で体験者(80代女性)がしぼり出すような声で話された「集団自決に日本軍の関与がなかったというなら、あの戦争もなかったということだ」この言葉が、私の心にしみた。糸教慶子氏の圧勝の裏には、このような県民の声なき声と平和への願いがあった。
注)沖縄社会大衆党:1950年10月31日結党の地元政党。革新共闘の要と評され、沖縄県民党的存在。糸数慶子氏は党副委員長。
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次の資料は沖縄県議会に於いて6月22日の決議・意見書に対してかたくなな政府当局の姿勢に抗議し全会一致で採択された、異例の2度目の意見書である。沖縄県議会では全会派が県子ども会育成連絡協議会などが開催する検定意見撤回を求める県民大会に参加することを決めた。大会は同協議会や県PTA連合会、県婦人連合会など6団体が計画「国に県民の総意を示すべきだ」との意見で一致。仲里利信議長が準備委員会に加わる。95年の米兵による少女暴行事件に抗議する全県大会規模の大会になる。(9月29日宜野湾海浜公園で開催される)
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教科書検定に関する意見書
本県議会は、去る6月22日に全会一致で教科書検定に関する意見書を可決して関係要路に要請したところであるが、県内41市町村の議会においても同様に教科書検定意見の撤回と「集団自決」に関する記述の回復等を求める意見書が相次いで可決されたことを踏まえ、去る7月4日に沖縄県、沖縄県議会、市長会、市議会議長会、町村会及び町村議会議長会の代表6名が連携して関係要路に教科書検定問題に関する要請を行った。
これに対し、文部科学省は「教科用図書検定調査審議会が決定することであり、理解していただきたい」との回答に終始し、検定意見の撤回と「集団自決」に関する記述の回復を拒否している。
しかしながら、今回の教科書検定に際して、文部科学省はあらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で同審議会に諮問していること、諮問案の取りまとめに当たっては係争中の裁判を理由にし、かつ、一方の当事者の主張のみを取り上げていること、同審議会の検討経緯が明らかにされていないこと、これまでの事例ではほぼ同省の諮問どおりに答申されていることなどを考えた場合、今回の同省の回答は到底容認できるものではない。
また、要請への対応に当たって、本県議会を初め県内41市町村の議会すべてで意見書が可決され、県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾である。
よって、本県議会は、沖縄戦における「集団自決」が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、平和を希求し、悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも、今回の検定意見が撤回され、同記述の回復が速やかに行われるよう再度要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成19年7月11日
沖 縄 県 議 会