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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2008年8月号
私は、佐賀県有明漁協大浦支所の組合員で36年間、有明海で漁業を生業として生きてきました。豊饒(ほうじょう)の海、宝の海と言われ有明海沿岸の漁業者だけでなく、沿岸地域の経済にも大きな影響をもつ有明海が、諫早湾干拓事業により一変しました。1997年4月の潮受け堤防締め切り以降、大規模で異常な赤潮が長期にわたり発生し、タイラギやアサリが死滅し、カニ・エビ・シャコなど、またタコ・ヒラメ・クチゾコなどの底ものの漁種が激減してしまいました。
そのため生活が苦しく借金返済に困り自殺する人が増え、大浦でも2人の尊い命をなくしました。このままではあと何人もの犠牲者が出るか恐ろしくなりました。これは黙っていられない、漁業者がいなくなってしまうと思い裁判の原告になりました。この間、弁護団の熱い支援と市民に励まされながら政府の無謀な公共事業の見直しを訴えてきました。
佐賀地裁は6月27日、私たち漁業者の現在の苦しみを理解していただき画期的な勝訴判決をもらいました。判決は政府の対応を厳しく非難しました。先の佐賀地裁の工事差し止め仮処分決定、その後の高裁、最高裁、公害等調整委員会でも「開門調査をして原因を追究すべき」と言われ続けたにもかかわらず、調査もせず事業を進めてきた政府に対し、「立証妨害であり、訴訟上の信義則に反する」と断罪したのです。
この判決は有明海で働く私たち漁業者にとって明日への大きな希望につながるものでした。だから政府に対し、「控訴しないで、一刻も早く開門し、調整池に海水を入れるよう」政治決断を求めて、農水省交渉、農水大臣会談などを重ねてきました。農水大臣は私たち漁業者の現状と訴えを頷きながら聞いてもらい、よく理解してもらえたと思っていました。しかし、残念ながら控訴の判断を崩すことはできませんでした。
これには漁業者のみならず、支援の市民の憤りを禁じ得ませんでした。私たちは弁護団を通じていろいろな研究者の先生の意見を聞きながら、有明海の漁業と干拓地営農者が両立できる対策も農水省に提言してきました。しかし、役人は聞く耳を持たず「大臣が開けられないと言っているから開けられない」の一点張りです。この時、この役人は何を守ろうとしているのか、大きな疑問が湧きました。
いま政府は、食の安全と食糧自給率を高めようとする世論に押され、一次産業に真剣に取り組まなければいけないはずです。このようなことでは世界経済からも取り残されてしまうでしょう。国民の声を聞き、良識のある国政のできる政府の出現を切望しています。