特集■米軍・「核の傘」に依存しない一覧

自立した日本外交・安全保障へ向けて(上)

英 正道(はなぶさ・まさみち)

 1933年東京生まれ。58年に外務省入省、経済協力局長、外務報道官、ニューヨーク総領事、駐イタリア大使を務めた。

本論は、英正道氏が最近グッドタイム出版から刊行した『回想の外交官生活』のエピローグ「自立した日本外交・安全保障に向けて」のほぼ全文である。編集部は、本論の執筆時(昨年末)からさらに国際情勢の緊迫度が急速に進んだので加筆修正を筆者に要請したが、秋まで余裕がないとのことであった。そこで元のままの論文を筆者了解のもとに掲載する。日本の安全保障政策をめぐる議論に重要な一石を投じていると確信する。編集部

 国際社会の激変はまだまだ終わることなく続いている。残念ながら日本の国力も相対的に低下している。しかし変化し続ける一つの社会として、すでに日本が世界の中で最も素晴らしい国の一つになっていることも事実である。日本が国際場裏でどのような地位を占め、どのような役割を果たせるかという問題については、これからの日本人が取り組む必要がある。私は楽観主義的な性格もあり、舵取りを間違わねば日本は大丈夫と思っている。 続きを読む


変質する「日米同盟」と「専守防衛」

失われた専守防衛の時代精神と同盟の抑止力

NPO国際地政学研究所理事長 柳澤 協二

以下は、柳澤協二氏が理事長を務める国際地政学研究所主催で7月17日に行われたシンポジウム「失われた専守防衛の時代精神」での氏による基調講演の一部である。
柳澤氏は冒頭、国際情勢についておおむね次のような認識を話して論を展開された。
「今の時代は米中の『新冷戦』と言われています。しかし、私は『冷戦』というよりは、自分の勢力圏をまあ、昔のようになかなか地理的に画然と分けられないにしても、自分の勢力圏を囲い込もうとしている意味の争いです。『冷戦』というよりは、第二次世界大戦前夜のような状況に似てきているような感じを受けています。ただ、第二次大戦前と違って、このまま戦争になだれ込むようなことにはなっていないと思いますが。世界秩序をどうするかということよりも、自分の国の利益をどうやって最大化するかということを大国が考える時代なってしまったということだと思っています」 文責・編集部 続きを読む


特集■米軍・「核の傘」に依存しない、安全保障・防衛の対抗軸をめざす

 日本の安全保障問題の局面は急展開している。戦争の策源地米軍に依存しない真の安全保障確立へ国民的議論が必要である。
 米軍は今年に入って毎月、南シナ海での「航行の自由作戦」を実施し、地域の軍事緊張を煽っている。「南シナ海の軍事衝突は時間の問題」と題して元米海軍大将・元NATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高指令官のジェームズ・スタブリディス氏が、「一時的な措置により、21世紀初めの2つの大国による海洋をめぐる争いという根本まで解決することはできない。今後10年の主要なリスクになるだろう」と発言した(6月1日付「日本経済新聞」)。この中で氏は、「米国は現在、同盟国との対抗策を主導している。具体的には英国やフランス、オーストラリアの海軍と日本の海上自衛隊が人工島周辺の巡視を計画・実施している」と、すでに自衛隊が介入していることを公にした。 続きを読む