鈴木宣弘一覧

特集■「自立日本の総合安全保障を考える」農は国の本、国家安全保障の要

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

 国民の命を守り、国土を守るには、どんなときにも安全・安心な食料を安定的に国民に供給できること、それを支える自国の農林水産業が持続できることが不可欠であり、まさに、「農は国の本なり」、国家安全保障の要である。そのために、国民全体で農林水産業を支え、食料自給率を高く維持するのは、世界の常識である。食料自給は独立国家の最低条件である。 続きを読む


やはり「失うだけの日米FTA」

米中紛争の「はけ口」もセットで「TPP超え」いつの間にか消えた捏造語TAG

東京大学教授 鈴木 宣弘

「TPP水準」を意図的に強調する姑息

 日米FTA交渉をめぐって、多くの報道で農産物の開放を「TPP水準にとどめた」かのように強調されているが、これは間違いである。
 ①そもそも、TPP水準が大問題だったのだから、TPP水準にとどまったからよかったかのような報道が根本的におかしい。
 ②加えて、米中貿易戦争で行き場を失った米国農産物の「はけ口」とされ、トウモロコシなどの大規模な追加輸入の約束がセットで行われたのだから、これは明らかな「TPP超え」だ。 続きを読む


改定漁業法は根本的に間違っている

東京大学教授 鈴木 宣弘

最近の法改定は国家私物化の「総仕上げ」

規制改革、自由貿易の名目で、公共的・共助的なルールや組織を破壊し、日米オトモダチ企業に地域を食い物にさせる動きが止まらない。農業での最近の象徴的「事件」はH県Y市の農業特区である。突如、大企業が農地を買うことができるようになった。その企業はO社(M前会長)の関連会社である(民有林・国有林の「盗伐」合法化も木材チップのバイオマス発電を手掛けるO社への支援である)。そしてO社の社外取締役に就任しているのは、人材派遣大手会長T氏とLファームを展開したN氏である。政権と結びついた「利益相反」で地域を食い物にしている「常習犯」の、たいへん有能なMTNの3人だ。あまりにもわかりやすすぎる。 続きを読む


「TPP水準堅持」のごまかしは通用しない日米交渉

 

東京大学 鈴木 宣弘

飛んで火に入る夏の虫

 4月末、米国での日米首脳会談は完全にトランプ米大統領のペースで、安倍晋三首相は「飛んで火に入る夏の虫」だった。TPP11(米国抜きのTPP=環太平洋連携協定)と日欧EPA(経済連携協定)の発効後の想定以上の畜産物輸入急増で米国のシェアが落ちる中、米国内で日米FTA(自由貿易協定)での日本への圧力強化の要請が強まっていた。 続きを読む


言葉の破壊の行き着く先は国の破壊–TAG

自動車のために食料・農業を永続的に差し出すことにTAGは「FTAそのもの」

東京大学 鈴木 宣弘

耳を疑う詭弁

日米間で物品貿易協定(TAG)の開始が決まったのを受けて、AP通信や米国メディアは、ズバリ「日米がFTA交渉入りに合意(US, Japan agree to negotiate a free trade agreement)」と簡明直截に報じた。日本のメディアは「事実上のFTA」「FTAに発展も」とやや回りくどいが、TAGは「FTAそのもの」である。

筆者も「日米FTAはやらないと言ったわけでしょ。だから、日米FTAではないと言わないといけないから、稚拙な言葉のごまかしで、これは日米FTAなんです」(テレビ朝日「グッド!モーニング」コメント、2018年9月28日)と即座に指摘した。 続きを読む


国民を守らない政治への対処方針

発想の転換

東京大学 鈴木宣弘

規制緩和、自由貿易の正体~グローバル企業への便宜供与

 米国民が否定したTPP(環太平洋連携協定)をTPP11(米国抜きのTPP)で推進し、TPP型の協定を「TPPプラス」(TPP以上)にして、日欧EPA(経済連携協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)にも広げようと日本政府は「TPPゾンビ」の増殖に何故に邁進するのか。 続きを読む


米国新政権でも止まらぬ一層の国益譲歩

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘suzuki-tpp

「儲かるのは一部企業の経営陣のみで我々の暮らしはもっと苦しくなる。これ以上ごめんだ」と、国民の「格差是正」「自由貿易見直し」の声が巨大な「うねり」となり、直接選挙だから、大統領候補もすべてTPP(環太平洋連携協定)反対と表明し、TPP破棄を主張したトランプ氏が勝利した米国のみならず、日本とニュージーランド(11月15日に61vs57で可決)以外の参加国は、1国としてTPP関連法案を可決していない。つまり、各国の市民の力が「やはりTPPは悪い」と証明しつつあるのに、我が国だけが「バラ色」としか言わず、不安の声を抑えつけ、多くの懸念事項について、国会決議との整合性も含め、納得のいく説明は得られないまま、数の力で最後は強行採決すればよいとの姿勢をあからさまにしてきた。このような非民主主義的な国は日本だけである。誰のために政治・行政をやっているのか、このような手続きは日本の歴史に大きな禍根を残す。見え透いたウソとごまかしが平然と繰り返され、まかり通ってしまう、この国は異常である。 続きを読む


対米追従の限界~背筋凍るTPPの真実

2016-shinroRogo

<シリーズ・日本の進路を考える>
世界の政治も経済も危機は深まり、わが国を亡国に導く対米従属の安倍政権による軍事大国化の道に代わる、危機打開の進路が切実に求められている。
本誌では、各方面の識者の方々に「日本の進路」について語ってもらい、随時掲載する。(編集部)

食料安全保障政策の確立を

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘suzuki-tpp

 「東京オリンピックまで首相を続けたい」という発言に象徴されるように、米国に追従して自らの地位を守り、国民の命と生活を犠牲にする政治は限界に来ている。米国でも批准が困難になっているTPP(環太平洋経済連携協定)を決めようと、日本政府は水面下で国益を差し出し、ひとり批准を急ぐ。
 危険水域に入った暴走政治の現状と背筋凍るTPPの真実を見る。 続きを読む


政府のTPP影響評価・試算の誤謬

東京大学教授 鈴木 宣弘

TPP合意の政府説明・対応の異常

sn-img米国では、2015年11月5日の大統領の署名意思表示の90日後の2016年2月4日に署名、それから政府が105日かけてTPPの影響試算を出し、それに基づいて議会で5月中旬から議論する手続きと日程が明示されているのに、我が国では、TPP協定の詳細も国民に示さず、影響試算が出される前に、「国内対策」だけが先に示され、しかも、関連団体から要望を聞いたとしながら、対策も半年以上前に決まっていた。政府が考えている以上のセーフティネット政策の必要性を要請項目に挙げた団体には、政権党の幹部が激怒し、役所を通じて、政府が考えている以上のことを要請するなと事前に要請事項の削除を迫った。 続きを読む