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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』2007年2月号

マスコミは世論をミスリード
時の流れに流されない


日朝国交正常化早期実現を求める市民連帯・大阪共同代表

  有元 幹明


 一月二十日、作家辺見庸氏の講演を昨年に続いて聞いた。脳梗塞と癌を患っている彼、その話には鬼気迫るものがあり、聞く者の心に衝撃を与えていた。
 元新聞記者だった彼が、現下のマスコミの体たらくを切るのだから、流される情報を心して見る・読むことを示唆されたようで、改めて情報を主体性をもって吸収すべきだと言い聞かせている。ことの本質が見抜けないのか意図的なのか目下のマスコミ報道は歴史に禍根を残すであろう。読者を完全にミスリードしてしまっているといえる。
 私は日朝問題に関わって三十余年になるが、不幸にして戦後一番近い国である朝鮮半島と国交が結べない状態が続いていること(「韓国」とは戦後二十年の一九六五年に日韓条約締結、北半部とは未だ国交がない)はアジアの平和・安定構築を阻害している最大の課題であるとの立場で「日朝国交正常化」を促進させる運動を粘り強く行ってきた。そして歴代首相として初めて朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」という)を訪問した小泉首相と「朝鮮」の金正日総書記との間で交わされたピョンヤン宣言(二〇〇二年九月十七日)で、国交正常化の日程が見えたと思った瞬間、「朝鮮」を快しとしない勢力の猛烈な反撃で折角の機運が削がれてしまっているのが現状である。
 そこで最近特筆すべき二つのニュースに出会ったので紹介しよう。
 一つは「拉致問題、右翼が扇動」という産経の記事(二〇〇六年十二月二十日付け)。記事は米紙ニューヨーク・タイムズ紙(十七日付)は北朝鮮による日本人拉致問題は日本の右翼に煽られているとの記事を掲載した。「日本の右翼、北朝鮮の拉致問題で狂気」と題するノリミツ・オオニシ東京支局長の記事で、安倍晋三首相の誕生も拉致問題を利用した結果だと述べ、下がり続ける支持率を浮揚させるため首相は拉致問題にかかわり続けると結んでいる。
 同記事は@拉致被害者の家族らが進める「北朝鮮人権週間」に右翼組織のメンバーが関与、Aポスターの図柄は北朝鮮への危機感をいたずらにあおっている、B拉致問題が憲法改正や学校教育での愛国心育成と同じ『右翼好み』の課題になっている、C拉致問題をめぐる「より穏健な声」が右翼勢力によって暴力的に封じらけれている、D首相は支持率がかげると「政治的な生き残りのため、拉致問題にしがみつくことになるだろう」。
 このような記事はまさに事の本質を突いたものであり、日本のマスコミに決定的にかけていることといえる。
 「より穏健な声」の持ち主といえる帰国者蓮池薫氏、兄の透氏が山崎拓元自民党副総裁の訪朝後会談し、圧力ばかりの現政権の対朝鮮姿勢では、進展が期待できない、山崎氏は対話の窓口を空けてくれたという記事が出たとたん、蓮池氏へ連日嫌がらせが殺到するという始末である。これもマスコミが本質を伝えてこなかった、世論をミスリードしてきた結果であろう。
 もう一つの記事、権威あるドイツの新聞(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトング)の一月七日の日曜版に、経済専門のベテラン記者で偽造紙幣問題に詳しいフォン・クラウスW・ベンダー氏の記事がある。記事は「米国は朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮という。また大韓民国は南朝鮮という)が偽造ドルを製造していると主張するが、真の出所は米CIAである可能性が強い」というものである。同紙はさらに「ヨーロッパおよびアジアの偽造紙幣専門家の調査結果に基づき精巧に偽造された五十ドル、百ドルの『スーパーノート』は米国の情報機関が秘密工作遂行のために大量に製造したと見られ、米国政府は北朝鮮にその嫌疑をかぶせ圧迫する手段として利用している」と指摘した。同紙はブッシュ行政府が二〇〇五年秋に開かれた六者会談を前後して北朝鮮が偽造紙幣を製造していると主張して会談を中断に追い込み、以後朝鮮半島の緊張が高まっているとしながらつぎのように指摘した。
 ブッシュ行政府は北朝鮮がドル紙幣を偽造した『明確な証拠』を持っていると主張し、保安を理由に公開を拒否しているが、二〇〇三年イラク侵攻当時口実にした大量殺戮兵器の存在についても『明確な証拠』があると主張したが後にウソであることが明らかになったことがある。専門家さえ見分けるのに苦心する精巧な『スーパーノート』が、過去二十年間犯人も明らかにされないまま流通してきたことは、背後に国家が介入していたという証拠になりえる。米国は北朝鮮を偽造紙幣製造国と言っているが、北朝鮮は技術的に精巧な偽造紙幣製造技術を持っていない。また、ヨーロッパの専門家たちはヨーロッパで流通している偽造ドルの出所は東アジアに由来したものではなく、大部分は中東、東アフリカ、ロシアなどから流入したものと見ている。
 同紙はまた、高度の保安措置が必要な印刷機の製造会社の関係者の言葉を引用し、CIAがワシントン近郊の秘密印刷施設で偽造ドルを製造していると主張した。さらに、CIAは偽造紙幣を危険地域での秘密作戦を遂行するための資金に使っており、これは秘密工作に対する議会の統制を回避するためであると指摘した。
 あなたは、この二つのニュースをどのようにお読みになられたでしょうか。日本にとって大いに関係するニュースが日本のマスコミからは出てこない。権力から提供されるニュースで国民は事の本質を見抜けなくされているように思えてならない。