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自主・平和・民主のための広範な国民連合
月刊『日本の進路』1999年4月号
世界有数の軍港となる那覇軍港の浦添移転
反対運動に立ち上がった浦添市民
那覇軍港の浦添移転に反対する市民の会事務局長 久高政治
動き出した那覇軍港の移設
去年の4月3日、那覇商工会議所が国際ハブ港をつくるために那覇軍港を浦添地先へと提言しました。それを受けて5月22日、浦添商工会議所も提言を出しました。浦添の提言は、騒音のない静かな基地である、市街地から離れている、遊休化していて月に1隻か2隻しか入ってこない軍港であると具体的で、那覇軍港の浦添移設は国の財政支出を引き出す千載一遇のチャンスだと述べています。
浦添商工会議所はこの提言を浦添市議会に陳情し、市議会は9月12日に賛成多数で採択しました。沖縄県議会は浦添市議会の動きを見て、10月8日に那覇軍港の移設促進を決議しました。10月19日には那覇市議会も決議しました。
そういう一連の流れの中で、公明党は国際ハブ港開発という提言を打ち出して、那覇軍港の移設を認める浦添商工会議所案を支持するような内容を盛り込みました。それに対して、社民党や社大党も柔軟に対応するような姿勢を見せました。そして大田知事も、民間港に那覇軍港の機能の一部を移設するだけなら、これは軍港ではないと言い出しました。
大田県政の国際都市形成構想の中には、沖縄経済の自立化を図るために国際的な港湾や空港の開発をという考えがあります。保守の側もこの延長線上に乗っています。国際競争力を持つハブ港を作るには莫大な金がかかり、那覇商工会議所の計画では1兆4千億円です。沖縄だけではとても作れず、国の全面的な支援が必要です。だから、商工会議所などが公然と、国が希望する軍港の一部を引き受ける代わりに国際ハブ港を開発してもらおうと言い出したわけです。
稲嶺は商工会議所が提言した軍港移設をはっきり打ち出して、11月15日の県知事選で当選しました。
市民の会を結成
浦添の私たちは、稲嶺と対立した姿勢を明確に打ち出すことによって県民の支持を勝ち取るべきだ、向こうにすり寄った形になると争点がぼけて革新勢力を結集できないと思いました。私たちは軍港移設反対の旗を上げようと、8月から浦添地区労で論議を開始しました。共産党、社民党、社大党の浦添支部、市内の労組などに呼びかけて、9月に集まりを持ち、知事選の中で市民の会を立ち上げようと努力しました。しかし、各政党は選挙との関係で二の足を踏みました。結局、知事選が終わってから集まりを持ち直しました。
この時はまだ、労組と革新政党が主体で、民主団体への広がりは十分ではありませんでした。しかし、相手の動きは急ピッチでした。とにかく年内に立ち上げよう、私たちがまず発火点になって運動を広げていこう。そういう気持ちで、12月22日に「那覇軍港の浦添移転に反対する市民の会」を結成しました。
結成後、浦添市長と県知事に浦添移転反対の要請行動を行いました。革新政党や労組に対して、今後の取り組みへの支援を要請しました。年明け後も、そういう要請行動を続け、地域にも働きかけて2ヶ所で住民組織ができました。反戦地主が浦添ブロックを作って合流するなど、民主団体も入ってきました。名護のヘリ基地反対の闘いに学び、連帯を深めていこうということで、ヘリ基地反対協との交流会もやりました。
私たちは、那覇軍港の浦添移設は日米軍事同盟の新たな飛躍をめざした基地の再編強化であり、断固阻止しようと訴えています。浦添の水深は14〜15メートルで、那覇軍港の9メートル、横須賀や佐世保の13メートルよりも深く、移設するだけで機能強化になります。また、すぐそばに極東最大の兵站基地があり、これと結べば世界有数の軍港になります。この兵站基地と移設した軍港を結ぶ道路の建設もSACO合意で確認されていますから、浦添移設が基地の再編強化であることは疑う余地もありません。
同時に、沖縄県民は雇用問題など経済的にも社会的にも非常に厳しい状況におかれているので、国際ハブ港案に展望があるのかどうか、資料を取り寄せて学習し、神戸港、香港、台湾の高雄にも調査に行きました。そしてわかったことですが、国際ハブ港案は非現実的で、ハブ港ではなく巨大な釣り堀となりかねません。また、国が建設費を全部出すかのように宣伝されていますが、今の法体系では、たとえ高率の補助があっても、地元負担は何千億円となります。私たちは資料を示しながら、向こう側のごまかしを明らかにしています。
政府は那覇軍港の移設で実績を作ることを通じて、行きづまっている普天間基地の移設に突破口を開こうとねらっています。だから、これはSACO合意を打ち破る闘いでもあると、私たちは腹をかためて運動を進めています。
1100名の市民総決起大会
私たちは3月12日、市民総決起大会を開きました。浦添市議会が3月議会で移設促進を決議する動きがあったため、大急ぎで準備したものです。決議は普通、市議会の最終日に行われるので、市議会前段の3月12日に市民大会を設定ました。
ところが、市民の会の動きを察して、市議会は急きょ3月8日に、緊急動議で西海岸開発促進に関する要請を決議しました。決議は公明党を巻き込むために、軍港の移設は一部の機能だけと柔軟な内容で、30名の議員のうち17名が賛成しました。その翌日、野中官房長官がこれは地元の民意だとぶち上げました。
そんな事態になったので、市民総決起大会では運動の方向性を示さなければいけないと、住民投票を提起しました。県内からも多くの方々が参加し、東京から反戦地主の上原さんも見えました。1100名の人々で、浦添市民会館はいっぱいになりました。地元で初めて、軍港移設に反対する大きな集会を成功させました。
こうした市民の会の動きに連帯して、3月18日には学者・文化人のみなさんが記者会見を行い、那覇軍港の浦添移設に反対する声明を発表しました。
今後のことですが、宮城・浦添市長は公約に西海岸開発による国際ハブ港建設も掲げているのでぐらついていますが、SACO合意に基づく軍港移設には反対だと言っています。市議会の促進決議も機能強化はだめだと言っています。こんな状況ですから、国や県がどんな移設の内容を出してくるのか見えていません。したがって、住民投票の具体的な課題はまだ定められません。ただし、来年4月から那覇港湾について、那覇、県、浦添で一部事務組合が作られ、港湾管理者が革新の那覇市長から稲嶺知事に代わりますから、その段階で新たな動きも出てきます。だから、私たちは国や県の動きをにらみながら、各地域で住民組織をどんどん作っていくことに力を入れ、いつでも住民投票ができる体制を準備していきたいと考えています。
(談・文責編集部)