国際情勢・政治一覧

「国際協調」演出のG7サミット

「対中国包囲網」で最後の悪あがき

本誌編集長 山本 正治

 G7サミット(「主要7カ国」首脳会議)がイギリスで6月13日まで開かれた。「民主主義国」が結束して中国に対抗していく決意を確認したと伝えられる。トランプ時代と違って、形の上では「協調」が世界に印象づけられた。バイデン米大統領は「満足している」という。 続きを読む


「抑止一辺倒を越えて」を提言して

日本は嬉々として米国陣営の「雄」となり、「熱戦」の道を進むのか

NPO「新外交イニシアティブ(ND)」

代表・弁護士 猿田 佐世

 米中対立は激しさを増す一方であり、このままでは「新冷戦」にとどまらず、この地域で「熱戦」が起き、日本も戦場になりかねない。世界も米ブロックと中国ブロックに二分されていく。この状況下で日本には、軍事力強化の声しか存在しないかのような空気である。筆者が代表を務める新外交イニシアティブ(ND)では、この事態を強く懸念し、安全保障についての政策提言書「抑止一辺倒を越えて~時代の転換点における日本の安全保障戦略」を発表した。ぜひ、ご注目いただきたい。 続きを読む


米中対立を乗り越えて沖縄の基地負担軽減を

復帰50年の現状は日本という国家の堕落の象徴

沖縄国際大学准教授 野添 文彬

 

 近年、米中対立が激化し、特に台湾海峡における緊張が高まっている。3月9日には、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が、「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と発言した。 続きを読む


中国と私の85年

「天の呼ぶ声」に導かれた中国との関係

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

「盧溝橋」の形で登場した「中国」

 1937(昭和12)年7月7日、盧溝橋事件が勃発した。その後、支那事変(現在でいう日中戦争)、大東亜戦争(現在でいう太平洋戦争)へと拡大していくきっかけになった事件である。 続きを読む


盧溝橋事件、柳条湖事件記念日――歴史を鑑とすべき

「尖閣問題」 何故、中国と話し合わぬのか

『日本の進路』編集部

 7月7日は、1937年に日本の中国侵略戦争が本格化した盧溝橋事件の記念日である。9月18日には中国侵略を始めた柳条湖事件(「満州事変」、1931年)から90周年を迎える。

 日本は歴史を鑑に、発展し強国化する隣国中国と向かい合わなくてはならない。アジアの共生だけがわが国の生きる道である。 続きを読む


中国共産党設立百周年への特別な感懐

命がけで活躍した中国人青年の想いが乗り移った私

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

 今年7月1日、中国は共産党設立百周年の記念式典を予定している。百年前の7月23日から上海で開かれた初め

ての全国代表大会(以下「中共一大」と略称)で正式に共産党が設立されたのを祝賀するためである。
 私は日本人だし、共産主義者ではないから、中国人と同じような感情は持っていない。ところが不思議にも、私にはちょっと違った特別な「感懐」がある。これは誰にも見当つかないだろう。早稲田大学の元総長である私にとっては、共産党の設立を含む中国の近代化にそれこそ命がけで活躍した多くの中国人早稲田大学出身者の想いが乗り移っているからだ。 続きを読む


「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む


日米首脳会談 ■ 台湾問題の「踏み絵」を踏んだ菅首相

安全保障も経済も 「反中国同盟」ではわが国はやっていけない

『日本の進路』編集部

 日米首脳会談が4月17日、ワシントンで行われた。そこで菅首相は、米国の覇権維持のための対中国戦略に全面的に合意し、日米同盟の深化、「防衛力を強化すること」を約束した。
 米国の「日本を前面に立てて中国を抑え込む」策略に取り込まれた。中国は当然にも猛反発している。焦点は台湾問題である。東アジアの政治・軍事、経済の緊張は一気に高まる。 続きを読む


国内矛盾激化で限界となった「帝国」アメリカ

近隣国同士を争わせる危険な「帝国戦略」

『日本の進路』編集長 山本 正治

 コロナ禍は、近代以来の世界の諸矛盾を一挙に暴き出している。産業化がもたらした気候変動、異常気象、豪雨災害等々も、人びとの生存と世界経済に重大な問題を提起している。

 世界的貧困の深まりとデジタル化で経済の「長期停滞」が言われ、とくに2007年の金融危機以来の世界経済はこの1年で文字通り未曽有の危機状況となった。いつバブルが崩壊し金融危機となるか、世界経済は休火山の火口の中にあるようなものである。

 人びとの職が失われ、失業者が激増、世界中で貧困化が著しく進み、何億人もの人が食べ物にも事欠く。他方で、これまた未曽有の金融政策の結果、保有資産10億ドル以上の世界の超富裕層2千人余りはここ約1年で資産を200兆円増やした。日経新聞が、富の偏在の矛盾が広がり「世界に埋めがたい深い断層」を刻んだ、「一つの地球に二つの世界がある」と、特集を組んだほどである。 続きを読む


中国敵視の同盟能力向上狙う 日米首脳会談に反対する

あくまで独立自主で東アジアの平和確保に全力を注ぐべき

『日本の進路』編集部

中村進一(三重県議会議員)

 菅義偉首相は4月8日訪米し、バイデン米大統領との首脳会談に臨む。大統領と最初に会談する外国首脳となるといって菅首相周辺ははしゃいでいるようだ。こうした政権では国の運命を誤る。

 米国の衰退、中国の強国化で米中対立と東アジアの緊張激化は現実である。衰退の「帝国」アメリカは、日中両国を対立させ、中国を抑え込み、アジア支配、ドル覇権を維持しようと画策している。

 米国は日本列島・琉球弧からフィリピンに至る島々に中距離ミサイルなどを配備し、中国海空軍の太平洋進出を阻止して軍事覇権維持を狙う。わが国には、新基地建設、「敵基地攻撃力」など自衛隊の強化、軍事費負担増を迫って、最前線として中国と対立させようとしている。日本列島は対中国の文字通りの不沈空母となる。焦点は、尖閣諸島であり、中国の一部・台湾である。このままいけば、沖縄など日本列島が戦場となりかねない。日米安全保障協議委員会(いわゆる2プラス2)合意では、米政府監査院も完成を疑う辺野古新基地建設をわざわざ再確認した。

 わが国は、あくまで独立自主で、東アジアの平和確保に全力を注ぐべきである。 続きを読む


[尖閣海域の「緊張」]中国海警船「侵入」は完全な「やらせ」

問題を安定的に管理することが真の国益

『日本の進路』編集長 山本 正治

 日中両国間の「高級事務レベル海洋協議」が2月3日、外務省や国家安全保障局、水産庁、海上保安庁、それに防衛省などが参加し、団長を局次長級から局長級にレベルアップして開催された。そこでは、日本側が海警法施行に「強い懸念」を伝え、一方、中国側は「国際法に合致している」とやり合ったが、「双方は、東シナ海を『平和・協力・友好』の海とするとの目標を実現していく観点からも、海洋分野における具体的な協力・交流を推進していくことで一致」した。 続きを読む


いま改めて「平和5原則」に立った日中関係の再構築を

懸案の平和解決へ問われる菅政権

元自民党幹事長 山崎 拓 氏に聞く

 米中対立激化のはざまで日本の進路が厳しく問われている。戦後ほぼ一貫して政権与党で「日米同盟」一辺倒に見えた自民党の中にも当然のようにさまざまな動きが垣間見える。
 自民党「国防族」の中心だった山崎拓氏(近未来政治研究会最高顧問。元自民党幹事長、元副総裁。防衛庁長官や建設大臣を歴任)は昨年8月、「倉重篤郎のニュース最前線 崩壊・安倍政治 山崎拓が安倍流『従米構造』の破綻を論じる」(『サンデー毎日』8月6日号)ので次のように語っていた。

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香港問題をどう考えるか(1)

『日本の進路』編集長 山本 正治

より歴史的にとらえないと未来を誤る

 私たちは、自由を求める香港の青年たちの要求と闘いに深い共感をもっている。いかなる政権であってもこうした行動を力で弾圧することは許されない。
 しかし、香港の問題(国家安全維持法制定)は完全に中国の内政問題である。アヘン戦争によって奪われた香港の領土と主権を回復する歴史的課題が中国国民と政府にはまだ終わっていない。「国際社会」による、「自由」とか「人権」という言い分での乱暴な内政干渉は許されない。それは植民地主義の手法である。問題を解決できるのは中国国民だけである。 続きを読む


香港問題をどう考えるか(2)

『日本の進路』編集長 山本 正治

アヘン戦争で「大英帝国」に奪い取られた香港

卑屈なわが国マスコミ

 朝日新聞社説は「19世紀以降、英国の植民地支配下で育まれた独特の都市文化は変質せざるをえないだろう」(7月1日)といって、英国の香港植民地支配を無条件に賛美し、中国政府を激しく攻撃する。「香港の声を聞かずに」「人権」「香港の高度な自治」等々と、わが国マスコミも野党も声高である。だがこれらの中国攻撃は、「大英帝国」がアヘン戦争を通じて香港を中国から強奪し、植民地支配を進めたことに一言も触れない。それどころか朝日新聞に至っては逆に、それを天より高く持ち上げる。「植民地都市文化の変質」、大いに結構、それこそ必要ではないか。植民地文化にどっぷり汚染されたマスコミ人は気づかないのであろうか。 続きを読む