「二つの50周年」を「アジアに生きる」年に

日中不再戦、沖縄を再び戦場にしてはならない

『日本の進路』編集長 山本 正治

 読者の皆さま。新年あけましておめでとうございます。旧年中はご愛読、ご支援、まことにありがとうございました。
 昨一年を通じて、世界はますます歴史的転換期の様相をはっきりさせました。今年はどこまで行くか。進歩の歴史的胎動とともに、逆流も強まり、全世界の共同した闘いの強化が求められます。今年も皆さまがたとの連帯を糧に前進する決意です。よろしくお願いいたします。


緊迫する断層線上の世界

 コロナ感染症パンデミックに加速されて世界の諸矛盾は極限にまで激化しています。
 グローバル経済は分断され急ブレーキがかかったままです。アメリカの総額6兆ドル(約660兆円)規模をはじめ、各国の財政出動で世界経済は辛うじて息をつないでいます。中央銀行が資金供給した結果、世界のマネーは急増しインフレの危険、金融危機が言われますが出口が見つかりません。
 富はますます一部に蓄積し、他方には著しく膨大な貧困が蓄積する世界となって、矛盾・対立は急速に激化しています。コロナ禍で加速された技術革新、デジタル化が拍車をかけています。先進国と途上国との経済的格差はますます大きくなっています。途上国は、コロナ感染症対策も、脱炭素の気候危機対策も容易でありません。先進国内部でも、一部の富裕層と大多数の貧困層との分断が著しくなって、政治も不安定化しています。世界の歴史的激変のマグマが蓄積されています。
 この戦後世界の支配者アメリカでは、「二つの国がある」と言われるほどに国内対立が激化しています。あと数年で経済の世界第1位が中国と入れ替わります。世界経済の構造変化が進み、アメリカは資本主義(自由主義)のリーダー国の地位、覇権も危うくなっています。米軍のアフガニスタン敗退はその象徴でしょう。バイデン大統領は、民主主義サミットなどと称して世界の分断を煽っています。

アジアの時代は趨勢

 しかし、成長するアジアは時代の趨勢です。今年発足するRCEPを中心にして東アジア経済はますます大きな力を持つでしょう。中国は貧富の問題解決を目指して金持ち特権を押さえつける方向を強めています。アメリカなどの干渉圧力を乗り切り安定的に発展できるか注目されます。
 それだけにアメリカは焦っています。Quad(日米豪印)や核軍事同盟AUKUS(米英豪)などで「同盟国」を反中国の前面に立たせるとともに、中距離戦力配備など軍事強化を強めています。
 とくに、「台湾独立」を唆して、中国に圧力を加えています。「国家統一」を国是とする中国も、当然のように軍事も含めた強硬対応に出ています。一気に東アジアの緊張が激化し、不測の衝突も起こりかねない情勢です。
 日本の平和な進路が問われます。

新しい若い動き

 昨年8月の政府間パネル(IPCC)報告は、今後、極端な高温、干ばつ、あるいは大雨など、気候変動で未曽有の大災害発生を警告しました。食料危機にも直面します。明らかに世界は持続不可能です。国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に際してグテレス国連事務総長は、「失敗は死刑宣告だ。人類を救う選択を」と訴えました。
 しかし会合は「壮大な茶番」に終わりました。世界の二酸化炭素総排出量の約半分は、中国、アメリカ、インドの3カ国です(18年)。しかし、一人当たりで、中国はアメリカの3分の1強、インドは10
分の1強にすぎません。産業革命以来の歴史で見ると、途上国の一人当たり総排出量は、先進国の何万分の一以下でしょう。誰の負担でこの危機を打開すべきか明らかです。だが先進国では、脱炭素も企業間、国家間の激しい争奪と投機の対象、すなわち企業利潤第一です。
 COP26が開かれたイギリスに世界の若者たちが集まり抗議を繰り広げました。ここには希望があります。参加した神奈川県の高校生原有穂さんは、「石炭は問題の一部であって、気候変動問題の本質は、差別や貧困など、より幅広い問題と深くつながっていることだと気づきました。今回の経験を元に進む方向を決めていければ」と述べていました(NHKテレビ)。
 気候変動危機にしろ、感染症危機にしろ、平等な世界を目指す真の国際協力が求められます。

今年こそ奪われた富を奪い返す

 国民の命、暮らしを守る政治が求められます。私たちは、コロナ禍が始まったころから、国民すべてに一人当たり100万円くらいを出すべきだと要求を掲げてきました。総額でも130兆円くらいです。政府の支援で国民から富を奪った大企業は、466兆円もの内部留保を貯めています(20年度)。政府や大企業に国民の富を盗られない、今までに奪われた富を取り返す闘いを進めましょう。
 非正規雇用を原則禁止し、すべての労働者に大幅賃上げを実現する。家族経営農林漁業と零細企業・中小企業をつぶさせない。労働者も農林漁業者も、零細な商工業者も、都市も農山漁村も、高齢者も子供も青年も女も男も、すべての国民が安心して暮らせる政治を目指そうではありませんか。

東アジアの平和を守る

 東アジアの平和は絶対に守らなければいけません。日本がアジアの一員としてどのように生きるか。
 今年は、体制の違いを超え共存を確認した日中国交正常化50周年です。この間に日中の経済関係は、文字通り飛躍的に発展し、今や切り離せないところとなっています。ところが、「台湾有事は日本有事」なる内政干渉、戦争挑発を政府自民党は強めています。アメリカの衰退をチャンスとばかりに、「軍事大国化」で中国に対抗しアジア覇権を目指すなど、時代錯誤の亡国路線です。私たちは、どの国の人権問題も看過すべきでありませんが、それと両国関係は別です。国交正常化の「原点」に戻り、再出発の年にしようではありませんか。
 沖縄返還50周年でもあります。日本政府はこの50年間、「施政権」を手にしましたが、米軍基地の現状とそれが引き起こす県民の苦難には向き合いませんでした。辺野古新基地建設にみられるように沖縄差別・分断が露骨になっています。南西諸島軍事要塞化で「再び戦場」化の危険を高めています。
 沖縄では、「(東アジア)地域の信頼醸成ネットワークのハブ」にとの提言も出されています。経済をはじめ脱炭素や感染症対策の共通課題、何より平和のために、日中を中心に東アジアの協力・共生が最も大切です。

岸田政権打倒へ

 岸田政権は、生活苦にあえぐ国民を放置。軍事費増、「敵」基地攻撃準備、軍事大国化――それを支える国内体制構築、民主的権利と私権への制限を強め、学術会議問題など学術・学問の自由への露骨な介入に乗り出しています。国民抑圧管理も強め、憲法改悪も公然化させています。
 コロナ禍は、日本社会の差別、分断を加速させました。ヘイトクライマ―(差別犯罪者)が跳梁し、中国や朝鮮・韓国、また在日朝鮮人などへの排外主義と差別が著しくなっています。「入管」など公権力による外国人や難民への差別・人権侵害も相次ぎます。あらゆる差別と民主主義破壊、国家統制の強化に反対します。
 2022年、コロナ禍で貧困化著しい国民の命と生活を守る、そこを原点にして運動を進めます。何よりも、「日中不再戦」、「沖縄を再び戦場にさせない」ため全力を尽くします。共に奮闘しましょう。

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