日米首脳会談 ■ 台湾問題の「踏み絵」を踏んだ菅首相

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安全保障も経済も 「反中国同盟」ではわが国はやっていけない

『日本の進路』編集部

 日米首脳会談が4月17日、ワシントンで行われた。そこで菅首相は、米国の覇権維持のための対中国戦略に全面的に合意し、日米同盟の深化、「防衛力を強化すること」を約束した。
 米国の「日本を前面に立てて中国を抑え込む」策略に取り込まれた。中国は当然にも猛反発している。焦点は台湾問題である。東アジアの政治・軍事、経済の緊張は一気に高まる。

 世界は、コロナ禍や気候変動が産業革命以来の諸矛盾を暴き出し、同時に技術革新が劇的に進み、貧富の格差・矛盾拡大が急で各国国内対立はかつてなく激化、文字通りの歴史的転換期にある。どの国も揺さぶられ、とりわけ大国は「自国第一」である。発展するアジアでは米中対立を機に一気に不安定化した。西欧の英、仏、独も艦隊を派遣するなど「参戦」し、インドやロシアも大国政治を進める。他方、韓国もASEAN諸国も自主的な道を模索している。
 この世界では、地球温暖化も、人権や民主主義も、あらゆる問題が大国の争奪の手段、戦術にすぎない。こうしたアジアでわが国菅首相は、戦争も辞さないような「反中国・日米同盟深化」に踏み込んだ。
 菅自公政権のわが国は、明らかに一線を越えた。もはや「安全保障は日米同盟、経済は中国」といった欺瞞すらも不可能である。安全保障も経済もアメリカに従う以外にない。しかも、国内に難問山積の米政権である。どういうことになるか、見えている。
 「反中国同盟」は亡国の道である。経済界も自民党や公明党の良識派を含む広範な国民は当然にも危機感を高めている。
 菅政権を打倒し、「同盟の羅針盤」を「自主的で平和」に正す闘いは喫緊の課題である。

「台湾有事」に備えた戦争準備が始まる

 会談後の記者会見でバイデン大統領は、「中国の挑戦を受けて立つ」「民主主義国家が勝利することができることを証明するため、共に取り組んでいく」と菅首相を前に力んだ。首相は、「私から日本の防衛力強化への決意を述べた」と応え、さらにその後の講演で、「(中国に対して)譲歩する考えはない」と断言した。
 「詳細は明かさない」と菅首相が記者会見で突っぱねたように密約もあるに違いない。だが、今回の特徴は何といっても1969年の首脳会談以来初めて、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」したことである。「一つの中国」の国際準則を破り、中国の内政である台湾問題に乱暴に踏み込んだのだ。
 合意を受けて両政府では、台湾有事に備えた〝日米共同作戦計画〟策定が始まる。わが国政府は、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法で自衛隊が武力行使する幅も広がっていると考えている。軍事強化が「全領域」で始まる。国民の生活苦と財政破綻にもかかわらず、9年連続増の軍事費のさらなる増額は避けられない。マスコミも、中国軍が尖閣諸島や台湾に明日にも攻めてくるかのような宣伝を繰り返す。
 岸防衛大臣は首脳会談に合わせて、台湾との距離がわずか110キロメートルの与那国の陸上自衛隊駐屯地に行き、「台湾の安定が重要だ」として態勢強化を指示した。これは戦争挑発以外の何ものでもない。この道では沖縄が再び戦場とされるのは避けられない。絶対に許せないことである。
 防衛は、国の主権を守る軍事的課題である。尖閣諸島は疑いなくわが国の領土である。領土、領海、領空の国家主権を守るため防衛を含むあらゆる努力が求められるのは当然である。
 中国も領有権を主張し、公船を派遣してくる。だが孫子の兵法の国が、日米を同時に敵に回す愚策に出るとは考えられない。わが国から見てもこれまで同様、外交的解決だけが事態を平和的に打開する道である。
 だが、混同してはならない。「台湾問題」は、わが国主権の問題とは一切関係がない。軍事衝突は望まないが、あくまでも中国の内政問題である。米国は国内法である台湾関係法で乱暴にも、「台湾の安全に対する脅威には米国が対抗措置を取る」としているようだが、当然にもわが国は関知しない。われわれは「存立危機事態」の安保法そのものに反対だが、台湾危機がそのままわが国の「存立事態」でないことは確かだ。
 政府自民党に、中国の台湾政策で気になることがあるならば、「反中国同盟」に加わらず友好的な態度で中国政権と話し合えばよい。それが永遠の隣国関係には不可欠である。

政権維持の私欲でバイデンの画策に取り込まれた菅首相

 中国はすさまじい勢いで台頭し、2028年にもGDPで米国を凌駕するといわれる。国力を強化して、屈辱のアヘン戦争以前の栄光を取り戻すことを国是としている。
 衰退した米国は覇権を奪われると焦っている。戦後のドルの世界支配、つくり上げた自国中心の国際秩序の崩壊が目の前で進むのにいら立っている。
 歴史を巻き返すために、バイデン政権はすべての力を対中国に振り向けようと周到に手を打っている。直前には、膨大な犠牲と戦費を費やしたアフガニスタンからの軍隊の撤収も強引に決めた。
 しかし、衰退した米国は単独では強大化した中国に対抗できない。軍事力ですら対抗は危うい状況となっている。今回の菅首相との会談が、バイデン政権最初の外国首脳との対面での会談となったのはそうした事情からだ。中国に近く、経済力も中国に次ぐ世界第3位の同盟国日本を最大限に利用しようとしている。日本を中国と対立させ、あわよくば日中両国の力を削ごうと画策している。
 政権基盤の弱い菅首相は政権延命のために、まんまと策略に乗せられた。
 バイデン大統領は、日米同盟の「効力」を不安がる自民党などのために核抑止力強化を含む「ゆるぎない日本の防衛」、それに安保条約第5条の尖閣諸島適用を再確認。また、住民の反対で揺れる辺野古や馬毛島の基地建設にも言及して菅政権の政策を正当化し支え、さらには言葉だけだが「拉致問題の即刻解決へのコミットメント」を再確認。東京五輪・パラリンピックについても「首相の努力を支持」と、リップサービス。ファイザー社のコロナワクチン提供も菅首相の手柄にさせる気配りだ。
 米国が代わりに得たものは大きい。菅首相に、「一つの中国」の国際準則を否定する「台湾海峡」問題の踏み絵を踏ませ、「反中国同盟」に引き込み、「防衛力強化」の約束もさせた。日本なしに米国の「反中国戦略」は成り立たない。
 菅首相は、「米中両にらみ」を放棄させられた。さらに半導体などサプライチェーン問題でも協力を約束させられ、反中国「経済同盟」に踏み込んだ。特に、バイデン政権は、西欧もにらみながら「脱炭素」の世界的主導権を握ろうとしている。国際競争力を持っているわが国自動車産業だが、1980年代に世界を席巻していた日本の半導体産業が日米半導体協定を機に衰退させられたのと同じような試練にさらされる。
 国益を売り渡す対米屈従外交を政権延命に利用した菅首相を断じて許せない。

台湾が「中国の不可分の一部」は国際準則

 「台湾海峡問題」に日米首脳会談で触れるのは1969年以来とマスコミは強調する。だが、何ゆえに「台湾海峡問題」が国際政治から消えたのか、決定的な変化に一言も触れない。
 中国では1949年、日本帝国主義侵略軍に勝利した共産党を中心とする愛国勢力が、大地主と外国帝国主義と結びついた大資本家の政党「国民党」政府に代わって新政権を北京に打ち立てた。世界各国は、中国を代表する唯一合法の政権として北京の共産党政権を相次いで承認した。
 国民党は、米第7艦隊に守られて台湾に逃げ込んだ。その国民党政府を中国の政権として最後まで承認し続けた有力国は、米国と追随した日本だけになった。しかし、日本も、米国も、この世界史の奔流からは逃れられなかった。
 72年にニクソン大統領の訪中、そして日中国交正常化となった。台湾の国民党政権は国際的信認をまったく失い、国連からも追放された。衰退が始まっていた米国には他に選択肢はなかった。
 日本政府は、日中国交正常化の共同声明で、「台湾が領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と確認した。ポツダム宣言(45年7月)第8項では、日本が奪った台湾などを中国に返還することを確認したカイロ宣言(43年12月)の履行がうたわれている。この田中角栄首相、大平正芳外相のもとでの共同声明は、しっかりと歴史を踏まえていて、わが国の永遠に守るべき原則である。日中間ではその後3回の基本文書が取り交わされ、平和5原則に沿う両国関係を固めてきた。与党である自民党や公明党、その政権は真摯にこうした歴史を継承すべきである。
 覇権維持をめざす米国は、中国の「核心的利益」中の「核心」にかかわるこの「台湾」を攻撃に利用しようとしている。
 中国は、台湾の統一は国是だが、「時は味方」と急いではいない。しかし、挑発には毅然と対応しなければ国内は大変になる。中国政府はあらゆる方法で対応するであろう。
 日米安保条約に縛られているにしても、わが国はこの争いに巻き込まれてはならない。菅首相周辺は、「平和的解決を促す」と共同声明に入れたことで「対中配慮」を示したと考えているとも報道されている。だが、台湾は中国の主権の範囲内のことにすぎない。中国からすれば、他国が、ましてや日本が口を出すなということだ。
 台湾の人びとも決して米国の手駒にされるのを喜んではいない。外国からの干渉がなければ中国の一部として平和的に繁栄の道を歩むであろう。
 それは中国だけでなく、わが国を含むアジア全体の利益にかない道理である。

米国一辺倒でなく、日中間の原点に戻り、アジアに生きる道を

 自主的で、アジアで共生する平和な進路のための国民的闘いが急がれる。
 ところが野党は褒められたものではない。「(日米が)共通の認識を得」たなどと手放しで対米追随の菅政権を賛美する。これでは野党としての存在価値はない。驚くのは共産党で、「台湾住民の自由に表明された民意を尊重すべき」と、「一つの中国」の国際準則を否定する「産経新聞」ばりである。
 むしろマスコミの中にある危機感の方が健全だ。朝日新聞社説の見出しは、「対中、主体的な戦略を」だった。他紙社説も、「米国頼みではない独自の対中戦略が求められる」(毎日新聞)、「米国一辺倒というわけにはいかない。バランス感覚が必要」(東京新聞)といった趣旨を展開していた。いずれもわが国の独自性を求めている。不足感も感じるが共感できる。
 昨年秋の、「言論NPO」の世論調査では、中国に「よくない印象を持っている」国民が90%近くに達する。しかし、「米中対立下」でどうすべきかの問いには、「米国と行動を共にする」はわずか14%、「日中の協力関係を促進」が50%近くに上る。健全で当然な国民意識である。
 日本の最大の貿易相手国・中国はじめアジアとの経済関係なしにわが国経済は成り立たない。財界も日中経済関係の発展を強く望んでいる。中西経団連会長の談話は、「中国」の言葉も出てこず、一線を越えた菅首相に事実上不快感を示すものだった。
 国の前途を憂える与野党を超ええた広範な国民各界のリーダーたちが結束して、国民の危惧と不安を世論に変え、政治の力に変え「米国一辺倒」から脱却しなくてはならない。急がなくてはならない。

 

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