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広範な国民連合第24回全国総会 [ パネルディスカッション5] コメンテーター 屋良 朝博・衆議院議員

アジアの共生 自立日本の総合安全保障を考える

日米同盟の犠牲になった沖縄から見て

篠原 孝さん
 ありがとうございます。
 柳澤さんから「三択論」の話がありました。日本の安全保障を考えた場合、現実問題として三原さんの話のなかにもありましたけど、「非武装中立」という理想論は非現実的だということでした。そこで、「日米同盟が基軸」といわれていますが、その犠牲になっているのは沖縄だろうと思います。
 私の地元にはかつて松代大本営がつくられました。朝鮮や中国の方々が動員されました。現在では戦争遺跡という形で、人びとが訪れている場所でもあります。沖縄では先の戦争で多くの一般県民が犠牲になり、戦後も日本の国土わずか0・6%という場所に在日米軍の約70%もの施設が集中し、今でも犠牲を強いられています。
 故翁長雄志前知事は「沖縄のアイデンティティ」ということをよくおっしゃっていました。その象徴の一つが首里城だったと思いますが、それも焼けてしまい、本当に沖縄県民の苦難は続いていると思います。
 この沖縄からずっと日本、そして世界を見てきた屋良さんからコメントいただけたらと思います。

劇的に変化する国際情勢踏まえた議論必要

 屋良でございます。よろしくお願いします。

 今年4月に行われた沖縄3区での補欠選挙で当選しました。もともとこの選挙区は現在の沖縄県知事である玉城デニーさんが議席を得ていたところです。そして、デニーさんが県知事になったので、私がその議席を受け継ぎ、国会に出させていただいています。国民民主党所属です。よろしくお願いします。
 さて、コメンテーターとして、それぞれの方々の発言に対して、自分の考えを述べないといけないんですが、非常に難しいなと思いながら聞いていました。
 柳澤先生からは、「戦争なんてできっこない」という現実を飲み込んだ上で、どのような政策が果たして可能なのか、具体的には「第4の選択」というのはあるのだろうかという提言だったと思います。実にリアルな問題意識だと感じました。

欧州とアジアとではアメリカの向き合い方が違う

 鈴木先生については、おっしゃるようにアメリカのヨーロッパとアジアに対する向き合い方は、ちょっと違いがあるという気が私もしています。
 とくに地位協定の内容を見るとそう感じます。ヨーロッパにおける米軍との地位協定のベースは各国ともいっしょで行政協定です。しかし、ヨーロッパでは各国は、補足協定をアメリカとの間で結んでいます。例えばイタリアも基地使用協定を結んでいるし、ドイツもボン補足協定を結んでいているなど、いわば地位協定との二重構造なんです。地位協定プラス補足協定という形です。
 一方、日本や韓国についてはそうした補足協定のようなものがなくて、どちらかというと、アメリカのグリップ(握る力)の方が強いという気がしていますので、この点も今後どうしていくべきか、大きなテーマだと思います。

変化する海兵隊の位置づけ

 三原先生は、こんにち的な安全保障の課題とは何なんだということを話されたと思います。そして、世界の貧困に対してどう向き合うかということを強調していました。
 私は三原先生の問題提起にもう一つ、自然災害という課題に国際社会がどのように向き合うべきかという点を付け加えたいと思います。自然災害をそのまま放置しておけば、やはり貧困が蔓延して、それが政治不安、そしてテロの温床になってしまいます。こんな負のスパイラルをどこで止めるかということは冷戦後の国際社会における大きな課題になっています。
 安全保障の課題も国際情勢の変化にともなって変化しており、単に軍事面だけが突出するような「抑止」だけを強調して、相手を威嚇するような冷戦時代の態勢は見直さなければなりません。
 沖縄の海兵隊も変化しております。皆さん、米軍再編で海兵隊がどれだけ減っていくかご承知でしょうか。沖縄の普天間を使っている海兵隊のなかの地上戦闘部隊は6千人いますけど、これが米軍再編によって800人になっちゃいます。約8分の1ですよ。だけど日本政府は、「抑止力を維持するために普天間を辺野古に移すんだ」といっている。そこのところは鈴木先生が「嘘っぱちだ」と言ったのはその通りでございまして、そんなのが本当に「抑止」かどうかっていうのはまったく分からないですね。
 今、沖縄の基地の多くを占めている海兵隊がこんなに減っていく、しかも、この地上戦闘兵力が800人になっていく海兵隊というのは、実は沖縄に実体のない部隊になっていきます。機動展開部隊として1年のうち半年以上は海外に展開しています。
 アメリカの戦略に照らしても、沖縄に海兵隊を配置する必然性は希薄です。何かがあったら、50万とか60万とかの兵力を本国からボンと増援する。それを受け入れる態勢がどこにあるかというと、アジアのなかでは日本でしょう。でもその兵力は沖縄だけでは手に余っちゃう。本土の九州とかこの辺で受けることができるかどうかということですね。受け入れ機能の拡散はすでに始まっておりまして、海兵隊の空中給油機が岩国に移駐しました。緊急時における受け入れ機能が、福岡県の航空自衛隊築城基地、宮崎県の航空自衛隊新田原基地に移りました。そうした米軍の受け入れ機能を九州で持たせようとしているようにも見えます。

「沖縄の米軍基地で日本は安全」は成り立たない

 だから、「沖縄に米軍基地を置けば、日本は安全だ」という認識は現状に合いません。こうした点も認識しながら、日本はアジアの国々とどう向き合っていくべきかということを考える必要があると思います。すでに先生方が指摘している通り、日本では安全保障というと、軍事力の面ばかりが議論されるわけですが、一口に軍事力といっても、それはどれくらい必要なのか、究極的には「核武装」ということにもなってしまいます。
 オスプレイやF35戦闘機、果ては日本を守るかどうか分からないイージス・アショアをアメリカから買ったりするようなことが、本当にベストな日本の安全保障の仕組みなのかどうかということをリアリスティックに議論をしていくべきだろうと思っています。
 アメリカも同盟国である日本のために太平洋を渡って、自国の若い兵士が死ぬかもしれないということを本当にするのか、そんなシステムが機能するのかということも考えないといけない。
 私は、「戦争なんて簡単にはできない」という、柳澤さんの指摘の線で開き直ることができるかということだと思います。

国際社会の変化を見ながら安全保障観を打ち立てる

 第二次世界大戦が終わって75年。中国も発展してきた、フィリピンも経済成長率は6%を超えています。ベトナムも今年7%を超えました。これはすごいことです。今、アジアの国々は、経済的にものすごく勢いがあって、元気です。むしろ日本が縮み、落ち込みが顕著です。「アメリカからたくさん武器を買わないと、トランプ大統領とディール(交渉)ができないんじゃないか」というのは、かび臭い内向きな議論でしょう。
 国際社会の変化なども見ながら、本当に安全保障とは何なのか、そしてその目的をもう一度点検して日本の安保政策を積み上げていく方向に変えないと、日本だけずっと世界の変化から取り残されてしまうような気がします。
 今年8月にフィリピンに行ってきました。実は私、フィリピン大学に留学し、6年間滞在した経験があります。フィリピン訪問時にドゥテルテ大統領の安全保障担当の補佐官と面談しました。私の興味・関心は、南シナ海における中国との関係をどのようにマネジメントしているのだろうかという点でした。
 この点を質問したところ、大統領補佐官は「私は飲茶もおいしくいただく。ハンバーガーもおいしいと思う。寿司もキムチもおいしい。たまにウォッカもたしなむ。それでいいんじゃないか」って言ったんですね。その言葉を聞いた私は次の質問が頭に浮かばなくなりました。南シナ海における安全保障の第一線におられる当事者から、「いろいろあっても戦争はできっこない」という、ある意味リアリスティックな答えが返ってきました。
 国民の意識を変えていくというのは非常に大きな仕事であり、私はそれは政治家の仕事であると思っています。これまでの認識というものを変えてみて、こんにち的な課題を見渡したときに、もしかしたら、新たな答えが出てくるかもしれません。
 辺野古に本当に新たな基地が必要なのか、しかもそれは、いつできるかも分からない。そんな政策をずっと推し進めて、沖縄の民意を無視する日本の政治というのは何だろうということがますます問われるし、こうした日本の仕草を国際社会も見ていると思います。
 むしろ、日本はアジアのなかでどう生きていくのかということをいま一度、右とか左とか関係なく、議論する場が必要ではないかという気がしました。ありがとうございます。