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広範な国民連合第24回全国総会 [ パネルディスカッション4] パネリスト 三原 朝彦・衆議院議員

アジアの共生 自立日本の総合安全保障を考える

三原さんは途上国問題を政治のなかに入れたいと政治家に

篠原 孝さん
 ありがとうございました。教授の言われたようなことは、私もメールマガジンで発信しているのでお読みいただけたらと思います。また、「日本の進路」(19年11月号)にも書きましたので目にしていただければと思います。
 次に話をされる三原さんは、外交・防衛の専門家です。お父さんである三原朝雄さん(元防衛庁長官)もそうでした。与党の国会議員は皆、組閣の頃になるとソワソワして、「入閣要請の電話がかかってくるのでは」とジッーと待っているそうです。ところが、三原さんはそんなことを意に介さず、国会ではなく、いつも海外に行っているようです。いつだったが、私が三原さんに電話をかけたら、通じない。アフリカのどこかの国に行っておられたそうです。皆さん、中村哲さんという方をご存知だと思います。「ペシャワールの会」でアフガニスタンの地で医師をしていました。その彼が今何をしているかというと、もう白衣を脱いで、用水路を造ったりするなどやっています。
 テロや戦争の原因は貧困だと柳澤さんは先ほどおっしゃっていました。貧しくてテロに走る人がいる。その貧しさをなくすんだということで、身を粉にして、世界中を飛び回っている三原さんからその辺の話を伺いたいと思います。

世界の貧困と向き合う政治の姿を

 柳澤先生、鈴木先生からのそれぞれのお話を面白い考え方もあるなと聞いていました。「面白い」というのは「interested」で、「興味がある」という意味ですよ。


 鳩山先生に久しぶりにお会いしました。1986年(昭和61年)に一緒に初当選して国会に出たんです。彼は47年2月11日生まれ。僕は5月生まれ。学年は一つ上だけど、いつも彼は本会議の私の右隣にいました。左側はいつも思い出すけど、残念ながら自殺した新井将敬さんですね。どちらも優秀で、すごい人材いるなと思っていました。特に鳩山さんは、優秀でしかも出自がいい。格好も悪くない。
 すでに鳩山さんの弟である邦夫さんが先に4期目の国会議員としていました。僕は「おい、鳩さん、小話できたぞ」って言うと、鳩山さんは、「朝ちゃん、またつくったの。教えてよ」って言うから、「鳩山由紀夫とかけて、憂国の志士と解く」「その心は?」「いつも、いつも邦夫(国を)想う」なんて言っていましたよ。
 本題に入りますが、私が政治家を志したのは開発途上国問題を日本の政治のなかに入れたいと思ったからです。そこが原点だったから、今篠原さんが言ったけど、アフリカによく行っています。東南アジアにもよく行っていました。

日本は償いをしなくてはいけない

 わが国は長年、海外援助を通じた形で戦後補償を東南アジアなどアジアの国々に対して行ってきました。アフリカは西欧諸国が植民地化しましたけど、日本は東南アジアや、中国、朝鮮半島に対して被害を与えたわけです。そして、そのための償いをしなければいけないということは日本の政府や国民の意識にもありました。いずれにしても、戦争や植民地支配を受けてきた発展途上国の人びとが人間らしい生活を営めるようにすることができれば、世界の平和がくるのではないかという、夢や理想をもって政治を始めたつもりです。
 そのためには、日本は争いをしない、させないということが大事です。こうしたことは柳澤先生の専門ですけど、私は私なりにどうすればいいのかということを考えています。国と国との関係はあつれきが少ないほどいいはずです。そのあつれきを少なくするためにはやはり問題となるような経済的な格差や領土問題、あるいは文化の違いや宗教の違いといったものを何とかして減らしていくことを皆で考えなきゃいけないと思います。

防衛の課題

 自衛権の問題一つとっても、個別的とか集団的とかいう議論もありますけれど、自分の国を守る自衛の問題もやはり無視することもできません。
 日本は先の大戦で完膚なく敗北したときに、マッカーサーが来て、「日本は12歳の子どもだ」みたいなことを言いました。日本が1956年に日ソ共同宣言を結んで国連に入ったときに、「もう自分たちの軍事力は放棄して、世界が守ってくれるようになればいい」という考えも、一時期は重光葵さんという方が言っていたこともあったんですね。今ではもう夢のような話ですが、国連が部隊をつくる集団安全保障みたいなことも一時期は語られていたこともあったわけですよね。
 ところが、朝鮮戦争もあってアメリカの政策で、当時の吉田茂首相の下で保安隊ができ、その後、警察予備隊、自衛隊となっていきました。
 今は皆さん方と意見を戦わせながら、例えば自衛隊の存在に対して議論をしているところです。「自分で自分を守るというのはどういうことだ」「そのためにはどのような国と国との付き合い方をすればいいか」ということを考えて、それを実行することが大事だと思っています。

貧困や飢餓のない世界をめざす日本の役割は何か

 今、私がささやかながらやっている国際活動では、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいます。SDGsでは、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」「気候変動」「水・衛生」「街づくり」など17のゴールを定めています。鈴木先生がいちばん関係している分野でもあります。私たちは水と食べ物がないと生きていけませんから。その次にくるのが、やっぱり衛生とか医療とかの問題でしょう。そうした人としての営みという人間の原点に立ち返って、やっぱりわれわれは物事を考えるべきだといっています。人間が人間らしく、自分が生まれ育ったところで生きていくための環境をどうやって守り、持続可能にしていくかが問われています。
 アフリカなどに行ってみると、まだまだ信じられないような状況があります。その上、アフリカ全体の人口はあっという間に約13億人までになりました。東南アジアでもパプアニューギニアの山奥などに行くと、まだ文明の光に当たっていないところがたくさんあります。今地球上で75億人以上の人間がいるけれども、そのうち1日に2ドル以下の生活しているのは、まだまだ1割ちょっといます。だから、そういう人たちがいる限りは真の意味での世界の安定とか平和というのは起こりえないのではないでしょうか。そのためにSDGsをもっと世界的に広げていって、その上で日本の役割は何だということを考えていかなくてはいけないということですね。

戦跡訪問で感じる命の大切さ

 それともう一つ、これもまた個人的なことですが、人間は生きていることが大切だと思っています。だから、私はこの10年間、2年にいっぺん、戦跡訪問だけは忘れないで行っています。いちばん大切な命というものをかけてまで戦争とはやる価値があるのかということも自分で考えながら、レイテ島、パラオとペリリュー島、また硫黄島などに行ってきました。今年の年末にはインパールに行くつもりです。もちろんそれ以外に朝鮮半島や中国などには日本の侵略の足跡があるので、そういうところも行くことは結構ありますので、自ら省みたりしています。そして国民の皆さんに選ばれて、国会議員を務めている以上、また戦争にならないようにということを自らに命ずるということで、やってきました。

米中対峙の中で日本の防衛を考える

 最後に現実の課題として挙がっている憲法問題です。
 私はそれについて、国民に選ばれた政治家が国会でその議論を絶対にしないというのはどうかと思っています。一時期は社会党左派の人たちが、「非武装中立論」ということを堂々と言っていました。私は一つの考え方として、全否定はしませんが、それは、まったくもって現実とは乖離したものだと思っています。この憲法問題、とくに9条の問題についてはやはりいずれ国民の信を問うべきだと思うし、私も国民の一人としてじっくり考えたいと思っているところです。
 私は何もすべてアメリカのことをいいとは思いません。しかし、中国は「覇道主義に走らない」といっていながら、少し違ってきたのではないかと思います。鄧小平さんが「改革・開放」路線にカジを切って、それに西欧諸国や日本が資本と技術を投下した結果、中国はぐんぐん伸びていきました。すでにわが国の3倍のGDP(国内総生産)の国になった。特許件数でも昨年日本を追い越し、アメリカに迫っている。
 それでアメリカもあわてふためいて、今度はAI(人工知能)とかIoT(モノのインターネット)などの分野でも先を抜かれてしまうというので、中国に対してかなり先鋭的な政策やろうとしています。
 その中国について、かつては「『改革・開放』路線でいずれ中国はわれわれと同じような国になる」という思いをもっていた人が多かったように思います。中国を研究する専門家も「われわれと意を通じ合えるから大丈夫だ」と思っていた経緯があったんだけど、今、そういう人たちまでが中国に対して猜疑心をもつようになっています。こうしたことはやっぱり中国自ら反省する点だろうと思います。
 この9月の建国70周年の記念式典でも習近平国家主席は「中国はあと30年後の2049年には、軍事的にも、経済的にも、文化的にも世界をリードする」と言ったもんだから、僕らも不安になるよね。
 その中国とも、柳澤さんもおっしゃられたように、敵対的にならずに付き合っていく、どうやって隣国として共存していくか、そうした方向が求められていると思います。