広範な国民連合第24回全国総会 [ パネルディスカッション3] パネリスト 鈴木宣弘・東京大学大学院教授

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アジアの共生 自立日本の総合安全保障を考える

食料安全保障が軽視される日本

篠原孝さん
 皆さんは、「安全保障」って聞くと当然、軍事面の安全保障が最初に頭の中に浮かんでくるでしょう。今の日本の状況、安倍首相が典型ですが、その軍事面ばかりが突出しています。しかし、エネルギー、食料、それから平和外交などトータルで日本の安全を確保しなければいけないんです。ですから、食料の安全保障はものすごく大事な問題ですが、日本では軽視され続けています。
 こうした点についてずっと発言してきている鈴木教授にお願いいたします。

農業政策をキーにしたアジア共同体を

 こんにちは。鈴木でございます。

 私は防衛の問題は専門外ですけども、日本の農業政策を安全保障も含めて考えると、「日米安保の幻想」というものが浮かび上がります。
 われわれ日本は何か独自にやろうとすると、「安保でアメリカに守ってもらっているから、アメリカに逆らえない」ということで思考停止になってきました。でも、本当にそうでしょうか。今日も議論がありましたが、アメリカが沖縄をはじめ日本に基地を置いているのは、日本を守るためでなくて、その日本を戦場にして、そこで押しとどめて、アメリカ本土を守るために置いているのです。そして、最終的に日本はその犠牲になるわけです。
 だから、「アメリカに守ってもらっている」という幻想を理由にして日本がアメリカの言うことを聞かなければいけないというのは根本的に間違っているんです。また、アメリカは広島や長崎への原爆投下をいまだに「正当だった」と言っています。こんな人たちとどうやって仲良くするんですか。「友愛」「共和」は必要ですが、その前提がアメリカとの間ではできていないんですよ。
 今年、日本は相次ぐ台風などの自然災害で大変な被害を受けました。あのときに国はすぐ動きましたか。そんななか、オスプレイ、F35戦闘機、イージス・アショアに何兆円使っているんですか。
 災害があったときに、国民の生命や安全を守る、食料や電気などのエネルギーを国民にしっかり確保する、それから普段から最悪の事態が起きないようにしっかりと守りを固めることこそが安全保障じゃないですか。食料がなくて、困ったからといって、オスプレイをかじるんですかっていうことです。
 日本の戦後は、貿易における自由化は徐々に進めていこうという方針でした。しかし、2000年から突如FTA(自由貿易協定)という形で、2国間で差別的な協定をやろうという方向にカジを切りました。そのときに、ウチの大学の経済学部の「大家」と言われた人は、それまで「FTAはやってはいけない。日米FTAは最悪だ」と言っていたのに、「FTAほどいいものはない」と言い始めたわけですよ。だから、私はその人に、「先生、これまでと言っていることと違う」と言ったら、その先生は「理屈を言うな」と言ったのでありました。理論経済学の「大家」が「理屈を言うな」なんて言うんですから、この国の経済学は崩壊していますよ。

トランプ大統領だけが「ウィンウィン」

 今回、日米FTA、日米貿易協定も一応第一弾が決まった。でも、どこが「ウィンウィン」ですか。「ウィンウィン」はトランプ大統領だけですよ。日本から農産物も取り、自動車関税の問題も日本には譲らなかったということです。すべて自分の選挙対策でモノにしたんですよ。彼は選挙対策のために徹底的に日本を食い物にしたわけです。しかも、アメリカの余剰トウモロコシを日本が買うという合意はひどいものですね。300万トン買うとされていますが、一説には1000万トンという話もあるくらいです。米中間の通商紛争で中国が一度は「買う」と言ったのを翻したので、その尻拭いをさせられているのが日本です。
 ですので、今回の日米協定もそういう意味で日本側が得たものは一つもない、トランプ大統領の選挙対策のためのまさに援軍的協定というものです。
 このようにアメリカから脅されると、必ず思考停止に陥るような状況は全然脱却できていません。

日本は中国、韓国、朝鮮などアジアのすべての国で互恵的な共通農業政策をつくる

 そういうなかでわれわれはアメリカなどと対等な関係をつくるにはどうしたらいいかといえば、日本は中国や韓国、朝鮮等々のアジアのすべての国々といっしょになって、共通性のなかで、基盤をつくるような、アジア共同体的なものをしっかりとつくることで、世界におけるわれわれの立場をしっかりと示していくということです。こうしたことは、議論になる場合もありますが、大体はいつも「入り口論」で終わっているわけです。だから具体的に論じなくてはいけません、もっとアジアの国々の間でTPPではなく、お互いに助け合って、発展できるような互恵的な協定が必要です。農業の面でいえば、アジアの国々には水田農業が中心であるという共通性があります。そういう共通性の下で、多様な農業がちゃんと生き残って、発展できるようなルールというのを私たちが提案しなくてはいけないわけですよ。そして、そのための具体的なプランが必要です。今、もう「総論賛成」ではなくて、具体的な対案を元にみんなが議論するところまで進めなければいけないと思っています。
 私は箱崎にある九州大学のアジア総合政策センターの教授もやっていました。そこで、私は東アジア共通の農業政策を具体的に提案しました。これを元に議論できるような形にもっていかなければと思っています。

世界の笑いものの日米貿易協定

 あと一点だけ言っておきたいのは、今回の日米協定は国会で承認されようとしていますが、これはWTO(世界貿易機関)、国際法違反の協定であって、こんなものを承認してしまえば、日本は世界からの笑いものになります。
 もう二度と世界的な大戦を起こしてはいけないということで、戦後のGATT(貿易と関税に関する一般協定、1947年)・WTO(世界貿易機関、95年)体制ができました。各国が平等に通商政策をしなければいけないと決めたルールを破って、今回日米FTAで、つまみ食い的に一部のものだけを関税撤廃できることに、世界が疑問視しています。ところが、日本だけは国民にその真実を伝えないで、勝手に通そうとしているんです。もし、このまま日米FTAが通ったら、世界の国々は「そうか、オレたちも何やってもいい」と考えて、各国の間で一部の品目だけ関税を上げたりなどするかもしれない。その結果、世界中がブロック化したら、また戦争前夜ですよ。それを日本がやろうとしているんです。
 そもそも、きっかけはトランプ大統領から「日本の自動車に25%の関税をかけるぞ」と脅されたことですよ。でも、その脅し自体がWTO違反です。勝手に特定の国に対して、その品目の関税をつり上げるなんてことはそもそもやってはいけないのが国際ルールなんです。そんなアメリカに対して、EU(欧州連合)は反発して、WTOへの提訴などをしましたが、日本は「言うことを聞くから、オレだけは許してくれ」って言ったわけです。それで、どんどん農産物が差し出された揚げ句、自動車関税についても約束を守ってもらえず、そればかりか余剰トウモロコシも買わされてしまいそうです。
 しかも、アメリカは議会の承認がいらない形での協定にしています。日本だけが国会で正式に承認するわけです。何か自国に不都合なことが起きてもアメリカは議会が「オレは知らない。承認しなかった」と言えば逃げられるわけです。一方、日本は国会で承認してしまえばもう逃げ場はありません。だから、いちばん恥ずかしいのは日本なんです。

安全保障を理由に食料の国境措置を守るべき

 もう一つ、安全保障の関係で付け加えると、アメリカが日本の自動車に25%の関税をかける口実として「安全保障」を理由にしています。安倍政権は「アメリカは関税問題を持ち出さない」というふうに言っていますが、今回の協定条文に「協定のいかなる規定も安全保障上の措置を取ることを妨げない」ということをわざわざアメリカは書いたんです。つまり、また日本を脅すときはこの条文を使って、また言ってくるということですよ。
 本当であれば、日本は逆に「安全保障上の理由で食料を守る」「食料の国境措置はこれ以上下げない」と対等にアメリカに主張すればいいじゃないですか。しかし、安倍政権がこんなことを言えるわけではないので、結局、こうした状況をどう打開するかというのが問われていると思います。

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