国民総貧困化、大軍拡と大企業優遇の政府予算に反対する

政府と大企業に奪われた富を奪い返せ!

『日本の進路』編集部

 イラン革命防衛隊司令官をアメリカがイラクで殺害、「第3次世界大戦か」と国際社会は著しく緊張が走る年頭となった。まさに歴史的転換期の年明けである。
 安倍晋三政権はその中東海域に海自艦船の派兵を強行、戦争の当事者となりかねない「大国化」を進めている。他方、国民の総貧困化はいちだんと深刻になっている。実質消費支出は昨年暮れ2カ月続いて前年比マイナスとなっている。1年が過ぎたTPP11や年頭から施行の日米貿易協定などが農業を中心に国民経済の困難に拍車をかける。
 大軍拡と国民総貧困化に反対する、安倍政権打倒の闘いが今こそ求められる。
 世界中で労働者のストライキや若者の大規模な街頭デモなど怒りの行動が広がっている。わが国でも、国民の怒りと要求を基礎に、国民運動、大衆行動を促さなくてはならない。折しも日米安保条約60周年の今年、安倍政権の軍事大国化路線を打ち破る、自立とアジア共生の国の進路をめざす大前進を闘い取らなくてはならない。

大企業支援と大軍拡、国民負担増の政府予算案

 通常国会が始まり、補正予算とともに「15カ月予算」で総額107兆円余の20年度政府予算案が提出された。安倍首相は年頭記者会見で、「全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革していく。これが、本年、内閣の最大のチャレンジ」と宣言した。
 自衛隊の中東派兵を撤回させる、政府も軟弱地盤を認めるなど工事終了のめども立たない辺野古新基地建設を即時中止させる、それにIRとそれをめぐる贈収賄や桜を見る会、公職選挙法違反等々の腐敗政治追及など、安倍政権打倒の大前進が求められる。

 国民総貧困化を打開する国民的闘いを発展させるためにも、国会では政府予算案が当面の焦点である。
 政府予算案は第1に、これまでと同様に徹底した大企業優遇である。
 18年度末で450兆円も内部留保をため込んだ大企業への批判が高まっている。それをかわす狙いもあるのであろうか、「アベノミクスの成果により増加してきた現預金等を活用」したベンチャー企業への出資分を企業所得から控除する優遇税制を導入、投資額の25%まで法人税を免除する減税。さらに、次世代通信システム5Gへの投資促進で投資額の15%を免除する減税。大企業を徹底支援でさらに栄えさせる。

 他方、大軍拡予算である。
 軍事費は8年連続増額で、初めて5・3兆円を超えた。19年度補正予算でも0・4兆円が追加されている。アメリカの言い値で超高額武器を大量に購入するFMS(対外有償軍事援助)、中国を仮想敵にした護衛艦「いずも」の空母への改造費用などが盛り込まれている。国民貧困化の軍事大国化、アメリカ軍需大企業は大儲け。断じて許してはならない。

 第3に、しかも社会保障関係では国民負担増が目白押し。貧困な国民からさらに奪い取る。
 高齢化に伴う「自然増」分は毎年削減され、今年度も昨年度同様に1200億円削減。安倍政権の8年間で1兆8000憶円の削減となっている。年金支給額も「マクロ経済スライド」で2年続きの削減。さらに75歳以上の医療費の2割自己負担導入や介護保険料負担増などがもくろまれている。年金の担い手を増やすために「働き方改革」。まさに「死ぬまで働け、働けなくなった貧乏年寄りは死ね」予算である。

不公平は、「高齢者」と「現役」との世代間ではない

 当初予算案の社会保障費は35兆円を超えたが、22年以降は「団塊世代」が75歳以上となり、それに少子化が追い打ちをかけると危機があおられている。「社会保障制度は高齢者の暮らしを現役世代が支える仕組み」(読売新聞1月6日、社説)と、現役世代の負担が年々重くなるなどと世代間の不公平、対立をあおっている。
 昨年12月の政府の「検討会議」中間答申では、高齢者に働いてもらい社会保障財源の「担い手を増やす」方向が打ち出された。元気なうち働くのは結構だ。だが、「元気なうちは低賃金」で働け、働けなくなったら「死ね」は断じて許せない。現役世代もそんなことは望んでいない。
 問題は、世代間の不平等、不公平ではない。
 国際非政府組織オックスファムの報告では、世界の上位26人の富裕層が下位38億人の貧困層と同等の資産を保有しているという。これほどの不平等、富のごくごく一部の人びとへの集中、他方、世界中の貧困化。これこそ世界の諸問題の根源である。
 日本でも変わりはない。野村総研の推計では、安倍政権前の11年には金融資産1億円以上の富裕層は81万世帯だったが、17年には127万世帯近くに急増している。他方、人口の1億2700万人のうち2000万人(15・7%)が貧困層に属する(相対的貧困=基準手取り年収総額が1人世帯で122万円以下、2人世帯で196万円以下…の世帯)。
 なぜ、この富裕層や巨額の利益を内部留保でため込む大企業に負担させないのか。
 世界中で、格差拡大と不平等、貧困化への怒りの大衆行動が広がっている。
 日本の若者にも兆しはあるものの世界各国の「反乱」に比べるとまだこれからである。
 だが支配層は、日本も遅かれ早かれ「反乱」が避けられないとみている。日本経済新聞は社説(1月20日)で、「資本主義国家に、経済の格差はつきものかもしれない。それでも豊かな者と貧しい者を隔てる壁は、看過できぬほど高くなりつつある」と警鐘を鳴らしていた。
 安倍政権が「全世代型」などと称して、若者を中心に「現役世代」の支持を引き付けようとする政治的狙いもそこである。若者の不満を「高齢者」と対立させようと画策している。年金など高齢者の暮らしを支える社会保障を主張する野党に批判を向かわせようとしている。
 見えにくく覆い隠されている格差拡大と貧困の真の根源の暴露を強めなくてはならない。政府の大企業と金持ち優遇の政治の結果にほかならない。

社会保障の財源問題

 1989年4月1日、消費税が導入された。その時からこの税が社会保障の主要財源のように言われてきた。とくに2012年2月17日、当時の民主党と自民・公明両党の3党合意に基づいて民主党野田佳彦首相は閣議決定で、「(国分の)消費税収について法律上全額社会保障目的税化するなど、消費税収(国の)については、その使途を明確にし、全て国民に還元し、社会保障財源化する」と定めた。すなわち、社会保障の税財源を消費税に「限定」してしまった。そして税率引き上げを決めた。
 だが、消費税導入の狙いは何か。
 鹿児島大学の伊藤周平教授が論断するように、「法人税減税は消費税増税とセットである。法人3税の累計減収額は、1990年度から2018年度までで291兆円。また、1992年度から2018年度までの所得税・住民税の累計減収額も270兆円に上る。1989年度から2018年度までの消費税収の累計額は372兆円。消費税の増収分は、すべて法人税・所得税の減収の穴埋めに使われたといえる」(要旨。本文は「『全世代型社会保障』と消費税、自治体の課題」本誌19年9月~11月号)。これこそ消費税の本質的問題である。
 しかも、輸出大企業は消費税額分の輸出還付金を受け取っており、17年度総額約4兆1千億円、消費税収の約2割もの巨額が大企業に「還付」され、実質輸出補助金となった。輸出額トップのトヨタ自動車の還付額は3506憶円と推定される。「消費税は社会保障財源」は真っ赤なウソで、4分の1近くは大企業への補助金に消えるのである。許せるか!
 所得税の累進性は大幅に緩和され高額所得者優遇となったが、とくに住民税は極端だった。個人住民税の「所得割」税率は消費税導入前の1984年には2・5%から14%までの13区割の累進性だったが、導入の89年に5%から15%の3区割に、そして2007年には一律10%と累進性は完全に消滅した。低所得層に大幅増税で高所得層に大幅減税となった。
 消費税は、徹頭徹尾ひと握りの大企業と富裕層のための税制だ。こうして世界でまれに見るほどの貧困化、国民総貧困化がこの30年間に進んだ。
 同時に、労働の規制緩和、非正規雇用や「偽装請負」などの低賃金労働者が激増し、賃金水準は1990年代半ば以後下がる一方である。さらに今、安倍政権は、「働き方改革」などと称して、一段の規制緩和、労働条件の改悪を強引に推し進めようとしている。「終身雇用」制度の破壊・首切り自由の有期雇用化、労働時間規制撤廃、高齢者低賃金雇用制度等々である。
 国民総貧困化は大企業優遇の政治の産物にほかならない。大企業は使い切れないほど労働者国民を搾り取り、政府から(すなわち国民の税金)も貢がせて肥え太った。富裕層も拡大した。奪い返す以外に貧困を抜け出す道はない。

奪われた富を奪い返せ!

 最低賃金の1500円への引き上げ、雇用の安定。とくに、若者と女性、それに高齢者などの非正規労働者の労働条件の大幅引き上げ。そのためには中小企業への財政支援、税金をつぎ込め。TPP11や日米FTAに反対し日本の農畜産業を守り、安全・安心の食料自給実現に税金をつぎ込め。高齢者や障がい者年金、生活保護費などの削減反対、むしろ拡充など、社会保障政策の充実に税金を思い切って投入せよ。
 安倍政権の国民犠牲、大軍拡、大企業のための予算案に反対し、国民生活危機打開の闘いを広範な国民各層の連合を促し発展させなくてはならない。
 財源は、内部留保をため込む大企業と富裕層に吐き出させれば十分ある。

財源はうなるほどある!

 政府がもっと国債を発行し借金して国民に回せという主張もある。確かに安倍政権は、アベノミクスなどと称して、日銀に札を刷らせて国債を買い取らせ、あるいは株を購入させ、さらに公的年金資金(GPIF)で株を買わせ、大企業や金融資産保有層を潤わせている。その「カネ」を国民に回せとの主張は当然である。
 だが借金は先食いに過ぎない。最後は誰かが負担しなくてはならない。国家の借金を、潤った大企業や富裕層に資産を吐き出させ負担させるか、貧困化の国民が負担させられるか。最後的にはこの熾烈な闘争は避けられない。
 奪った者から、潤った者から、奪い返す!
 消費税は廃止を含めて抜本的に見直せ。財政に大企業の内部留保を吐き出させる適正な課税を。法人税は消費税導入以前の税率に戻し、さらに累進制を導入するなど大企業に適切な負担をさせよ。租税特別措置など大企業優遇税制を廃止せよ。所得税の累進課税を消費税導入以前に戻せ。金融所得を総合課税として資産家優遇をやめよ。
 国民全体が豊かになれば、国内需要は一挙に増大する。製造業も、農林漁業も生産は活発化し、商業もサービス業も需要ができて地域経済は全体として豊かになる。
 世界に続いて、わが国でも格差拡大と貧困に反対し行動を!

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