統一地方選 政府は沖縄の声、地方の声を聞け

広範な国民の連合を促す前進を期待する

『日本の進路』 編集部

 地域経済の疲弊は目を覆うばかり。国民各層の貧困化は「アベノミクスの恩恵が届かない」どころではない深刻な状況である。地方では議員のなり手にも事欠き、県議選ですら無投票が激増している。
 こうしたなかで今、北海道知事選など統一地方選挙と沖縄3区など衆院補選が争われている。
 安倍政権は、沖縄県民の意思に反して新基地建設を強行し、国民の暮らしは無視している。アジアの平和をめざすのではなく中国を仮想敵にして、アメリカ製武器を大量に買う大軍拡に拍車をかけている。豪雨災害などが多発し大地震の可能性も高まったというが原発推進で、平和と国民の生命・財産の安全・保全は眼中にない。
 自民党単独政権が崩壊してから30年近く、対米従属政治は完全に行き詰まった。政府は沖縄の声、地方の声をまったく聞かず、民主主義も地方自治もすでに形式すら瓦解。「沖縄やフランスの『黄色いベスト運動』に学ばなくては」との声も全国で広がっている。
 安倍政権打倒へ広範な国民運動の発展が求められる。地方選や参院選で重要なことは、安倍政権に打撃を与え国民運動の発展に役立つ結果を生み出すことである。一連の選挙で日本の自主と平和、民主の国民運動の発展をめざす人びとの前進を期待し共に奮闘する。

経済危機は新たな局面、諸矛盾は激化

 安倍政権が統計を操作しようが世界経済の危機は新たな状況となった。リーマン・ショック後、米欧日各国はアメリカFRBが通貨供給量を5倍にも増やしたように、中央銀行による大規模な金融緩和と政府財政の大盤振る舞いで乗り切ってきた。しかしここ数年、次の危機に備えようと米欧の中銀は、通貨供給量の圧縮・金利引き上げなどを始めていたが中止せざるを得ないところに追い込まれた。わが国は最悪で安倍首相と黒田日銀総裁はそうした素振りすらできずひたすら緩和を続けている。
 財政や金融で時間稼ぎしても解決しないのは当然である。問題の根本は、各国国民が貧乏になりすぎて必要なものをカネがないので買えない結果としての長期の世界的需要不足である。麻薬中毒のような金融政策は長くは続かない。破裂したら未曽有の災害となる金融バブルが極限近く膨張している。
 しかも衰退するアメリカがドル支配維持を狙って、対抗勢力となる中国を蹴落とそうと「新冷戦」に乗り出したことが輪をかけた。しかし、世界経済の牽引車だった中国を痛めつけようとして自らも傷ついた。
 トランプのアメリカは八つ当たりのように各国への犠牲転嫁を狙っている。こうして主要大国間の貿易戦争、技術覇権戦争がいちだんと激化した。米中対立の中で欧米諸国がアメリカとの違いを際立たせるなど大国間の対立が目立っている。とくに、技術革新の核心をなす5G(第5世代通信システム)をめぐるファーウェイ問題が象徴的である。
 しかし、トランプに取り入ることだけを「外交」とする安倍首相の下で属国路線を進むわが国には、欧州諸国のような「国益」を貫く選択肢はなかった。

農業と電子・自動車など地域経済に大打撃

 この状況は日本経済、地域にすでに大きな影響をもたらしている。
 輸出は急減し、昨年12月から前年比マイナスに。とくに半導体やそれを作る製造装置の中国輸出が激減。原料や生産資材の輸出も急減速。深刻な不況となって久しい日本経済を辛うじて支えてきた輸出が大打撃なのである。
 農林漁業の衰退の後に進出してきた製造業工場も撤退するなど疲弊した地域経済で、唯一活況を呈していた産業分野に大きな影響が出ている。たとえば半導体大手のルネサスエレクトロニクスは山形、熊本など全国の工場の生産調整、一時休止を発表した。労働者、とりわけ非正規雇用者や下請け企業、地域経済への打撃である。自動車企業もすでに輸出が減り始めた。
 アメリカは今、とくに自動車と農産物で日本への攻撃を強めている。トランプ大統領は報復をちらつかせ日本企業に米国生産と雇用拡大を求めた。豊田章男トヨタ自動車社長はわざわざワシントンに出向いて講演して、「どのような状況になってもトヨタは米国に残り続ける」と忠誠を誓った。トヨタ資本は生き延びても、日本経済と労働者や下請け企業はどうなるのか。

与野党含め「国家の未来図」を描けない政治

 日本経済、地域経済はかつてなく深刻な状況に直面した。この問題は、進行中の統一地方選挙でも本来最重要な政策テーマの一つにならなくてはならないし、わが国政治の最大の政策課題のはずである。
 しかも、中国の状況は一時的な現象にとどまらない。内閣府は3月12日、「中国は生産機械のような付加価値の高い製品や部品の輸出拠点になっている」とのレポートを発表した。国際特許でもアメリカに迫り、日本を上回った。GDPはすでに日本の3倍近く、軍事力も20年代にはアメリカに並ぶと見られている。
 この中国を自民党は、軍事と経済の両面から日米同盟で抑え込む狙いで「経済・外交・安全保障の戦略を一体で練る『国家経済会議(日本版NEC)』」の創設を提言する。そんなことができるのか? アメリカでさえも手を焼いている強国化する中国である。
 アメリカの「新冷戦」戦略に従うだけでよいのか、世界経済の破局の中で日本はどう生きるか、日本の生き方が問われている。政治にそれが問われている。小林喜光経済同友会代表幹事は、「国家の未来図が描かれないままの政治が、与野党含めて続いてしまった」と批判。長年自民党を支えてきた財界人の責任は問うまい。まさにその通りである。
 しかし、この深刻な課題は政治の争点とはなっていない。地方選だからか? 参院選に向けても、本格的な「国家の未来図」をめぐって論戦となりそうにない。
 そもそも地方政治最大の政治戦である11道府県知事選で与野党対決は北海道だけである。地方政治では少なくとも知事選を見る限り、沖縄や北海道などを除くと「与野党なれ合い」が続いている。
 野党各党に大奮起を促したい。とくに地方の、地域の閉塞感あふれる深刻な状況を目の当たりにしながら選挙を戦い抜く地方議員の皆さんには期待したい。

展望

 沖縄県民は、沖縄の未来は自分たちが決めると前進。とりわけ若者たちが立ち上がっている。心強い限りである。
 農山漁村でも新しい動きが芽生えている。安倍政権の農協解体攻撃にさらされたJA全中だが、「今ほど食料安保のリスクが大きくなっているときはない。国民の問題である」(中家徹会長)と国民的運動に乗り出す方向である(4ページ参照)。すでに福岡県では「食料の安全保障を考える福岡県民ネットワーク」が立ち上がった。
 自民党政権は7月の参院選で3年前に続いていくつもの農村県で「乱」に直面するは必定である。今回の4県知事選での「保守分裂」は、背後に農山漁村・疲弊する地域の不満と怒りがあることをしっかりと見なくてはならない。
 立ち上がった沖縄と「乱」の全国の農山漁村、それに都市の労働者を中心とする国民運動が相互に支持し合い連合することが求められる。

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