これからの世界でどう生きていくか・丹羽宇一郎さん語る

2016-shinroRogo

<シリーズ・日本の進路を考える>
世界の政治も経済も危機は深まり、わが国を亡国に導く対米従属の安倍政権による軍事大国化の道に代わる、危機打開の進路が切実に求められている。
本誌では、各方面の識者の方々に「日本の進路」について語ってもらい、随時掲載する。(編集部)

いまこそ、独自の新しい日本の国家像を

財界人・元中国大使 丹羽 宇一郎さん

niwa-uishiro

いま求められる「真実を語る」勇気

 これからの世界情勢の中で、どう生きていくかは、いま、日本のいちばん大きなテーマです。そのためには、「真実を語る勇気」が求められていると思います。
 世界のあちこちで、問題が起きています。

 私に言わせれば、こうしたことについて、政府はもちろん、それに反対している人びとも、学者、文化人と言われる人びとも真実を語る努力をしていない。取り繕ったり、自分の都合のいい立場の議論をしている。

崩れ始めたアメリカ中心のレジーム体制

 私は、21世紀を迎えた中、戦後のアメリカを中心としたレジーム体制が崩れ始めてきたと思います。この戦後のレジーム体制そのものを突き動かし、変えている力は何か、真実が語られていない。

 このレジーム体制は、ある意味では「虚像の世界」です。「民主主義」世界とか、あるいはパックス・アメリカーナの世界。こうした認識を政権与党を中心にして、権力者、指導グループはつくり上げてきたわけです。その中で、富裕層、力がある者の繁栄が、やがて「トリクルダウン」して下層階級の世界に広がって、世界中の人びとの生活が良くなるというようなことをずっと、言い続けてきたわけです。日本だけでなく、アメリカも、イギリスも、ドイツも同じ流れです。

 「真実が語られない」ことがいま、世界中である。アメリカで、トランプが出てきたのもそういうことでしょう。人が語らないことを、単純で明快にしゃべるとああいう過激な言葉になるわけです。
 最近の朝鮮半島問題も、やっぱり、そういう部分が底流にあるんです。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、アメリカと何としても自国の安全保障問題を話したいと思っているんだ。ところが核開発問題についてアメリカがOKしない。北朝鮮にしたら、インド、イラン、パキスタン等いくつかの国でもやっていることを、なぜわが国だけにOKしないんだということになる。そこを皆、もっと突っ込んで考えなきゃいけないね。

 いま日本では、沖縄問題1つとっても真実を語っていないじゃないですか。理屈の上で説明がつかないことがいろいろ出てくる。例えば、政府は「沖縄の人びとに寄り添って、物事を決めなくてはいけない」と言います。でも、やっていることは、まったく逆です。
 沖縄県民からしてみれば、政府は、真実を語ってはいない。

 権力グループ、そういう国の「主流派」の方々だけではなく、「反主流派」の方々も真実を語る努力をしていないんじゃないか。

沖縄の問題の根本は治外法権を認める日米地位協定

 沖縄だけが、いまどうしてこういう深刻な問題を抱え続けているのか、もっと真実をつまびらかにすべきだ。

 やはり日米地位協定が問題です。沖縄では、第2次大戦の戦後は終わっていないんです。戦勝国が敗戦国の土地を一方的に、彼らの意思で勝手放題に使う、治外法権になっている。戦後70年も過ぎて、世界の中で、そんな国はどこにあるんだということです。沖縄県民は未だに犠牲になっているんです。
 そこのところを、政権与党も、あるいはメディアにしても分かっている。日米地位協定があって、日本の政府には実質的に力がない。オスプレイを導入しようがどうしようが、基地をどう使おうがまったく自由。要するに、日本の土地でありながら、日本のものになってない。

 底流には難しい問題がたくさんあるでしょうから一気に行かなくても、日本が主権を取り戻して、「ここは日本の土地だ」、アメリカに対して「お前たちに貸してやっているんだ」「だけれども、できるだけ早く返せ」というふうにしなきゃダメです。そうしなければいつまでたっても、他の国に治外法権的なことをやられる。属国じゃない。日本はハワイの次の州ではないし、「米国日本州」じゃないんだから。
 日米地位協定を見直さないとダメです。
 ところが、いま沖縄でオスプレイの発着か何かの飛行場を強引につくろうとしている。沖縄の県民からしてみたら、「なんで、われわれの土地に、独立国家でありながら、自衛隊まで来て県民を蹴散らして」「お前ら何十年前と同じことを、砂川闘争(注)じゃないけどやっている」と許せない。県民でなくてももう許せないね。
 その点をもう少し、メディアもキチッと言わなければならない。それから野党、「反主流派」、あなた方も含めて、もっと核心を突いた議論をしていかないといけない。
 それも、1回言えばおしまいではなく、「なぜ、いつまでたっても改まらないのか」という本質問題をやらないと、この沖縄の基地問題は永遠に解決しない。

世界から無視される安倍首相の日本

 中国・杭州でのG20で、オバマ米大統領は習近平中国国家主席と3、4時間話しているわけです。ところが、オバマさんは、安倍首相にその内容説明をしていない。これだけ日本が「アメリカ、アメリカ」と同盟強化に努力しているのにです。オバマは「時間がない」と言って、安倍に会わずに帰った。アンコールワットに観光に行く時間があって、安倍に会う時間はない。

 習近平の中国も、最後に時間が余ったから会談してやるという態度でしょう。あるいは、他の先進諸国との首脳会談もない。「安倍と首脳会談をしよう」という国はないのか。韓国の朴大統領とは会ったけど、ドイツ、フランス、イギリスとの首脳会談はない。

 そういうことを考えると、今の日本の立ち位置というのは非常に危ないところにあるわけです。アメリカでさえ日本をぞんざいに扱っている。
 安倍首相は、ロシアとの領土問題をどうのこうのと言っているけれど、あの領土問題をここまでこじらせたのはアメリカです。第2次大戦後の処理も、その後、日本が北方領土問題を進めようとしても、終始、アメリカが沖縄との関連もあり同意しなかった。

 日中関係もまさに同じで、中国の悪いところばっかり言ったって、日本は良くならない。悪いこと言ったら、日本が良くなるならバンバン言いましょうよ。中国を褒めまくったって、良くないんだけど。やはり、真実を語って、中国との関係は本当はどうなったらいいのかということをもっと、語るべきです。
 世界と日本の真実を明らかにする。真実を語ることなくして、真実の対応もできないわけです。
 これが第一番目の課題です。

日本はこれからどうすべきか

戦後世界の構造が変わったことを自覚すべき

 いま、国際情勢の中で、中国抜きにして世界を語れないぐらい中国の存在が大きくなっています。
 アメリカが世界情勢を規定する力があるかといえば、もはや力をなくしています。アメリカが何を言っても、世界のことは何も決まらない。北朝鮮の問題もそうだし、中東問題も、あるいは対EUの間も、貿易面でも決まらない。そういうことを考えると、やっぱり、いまの日本の立ち位置というのは非常に危ないところにあるわけです。

 とくに、中国という国の本当の力を日本はキチンと認識しなきゃいけない。「悔しい」「癪(しゃく)に障る」という感情的な形で、国際情勢を見てはいけない。
 いま、中国の国内総生産(GDP)は日本の2倍以上です。あるいは世界貿易の取引総額にしても全体のトップで、13%近くも占めている。おそらく日本の3倍はあります。

 経済開発機構(OECD)が最近、「R&D」と言われる研究・開発業務に携わる科学者の数について発表したが、中国人は148万人もいる。アメリカ人が約125万人。3番目が日本で66万人です。中国は日本の2倍以上の科学、技術関係の力を、人間の数からもっているわけです。この先20年、こういう形で進んで行ったら、2倍以上の技術関係の差がつく。そうした力を人の数からいってももっているわけです。日本人が2倍以上賢いはずはない。
 アメリカもこのままでは20年後は勝てない。

 そういうことを考えると、中国が力をこれだけもってくると、日本が「力対力」で勝負しようという考え方は止めた方がいい。
 ところが日本は依然として、アメリカの後をついて、「力対力」で、モノごとを解決しようとしている。これは、本当にアナクロニズムです。安倍首相はいまも、第2次大戦後のアメリカ中心のレジーム体制の中で、何とか主要国の中に入り込んで、アメリカに付き従って行こうとしている。ところが、アメリカがもはや、以前のような力をなくしている。アメリカ中心では決まらない。

日本は日本の立場で独自の発信を

 じゃあ、世界はどのようにやっていったらいいのかということを、日本は日本の立場で、発言をしなきゃいけない。日本が提案して、これからの世界の政治はこのようにやっていかなきゃいけない、話し合いでもって物事を解決するような方向へ世界をもっていかなくてはいけないんです。

 今の状況は「力対力」でやっていったら確実に戦争になる。それはペロポネソス戦争の「ツキジデスの罠」です(注)。世界の覇権国の交代を、「力対力」でやったら、必ず(戦争に)なる。武器をもって向かい合ったら、どっちかが撃つんです。「憎い」とか「コノヤロー」って撃つのではなくて、相手に殺される前に、自分が相手を殺そうとするんです。
 だから、軍事的に相対したらダメなんだ。しかも、そこへいま日本の自衛隊が出かけようとしている。アメリカの後についてですね。必ず被害が出る。日本の自衛隊員が犠牲になる。政治家、国家リーダーはどうやって責任を取るんでしょうか。

 いまの日本のリーダーは「戦争は残虐で怖いんだ」ということをイメージできない人が多くなっている。戦争の経験者で、戦争をやろうという人はほとんどいません。

どういう日本にするか――「特別な国」に

 3つ目は、どういう日本にするかということです。
 日本は国際社会の中で仲良くやっていかなくては。日本は、あらゆるものが輸入です。輸入っていうことは、世界のどの国とも仲良くしなくては日本は生きていけない。輸出で中国14億人の市場を「あれはけしからん」とケンカしても何の意味もない。日本は全部の国と仲良くしなきゃ。
 そのための平和憲法なんだ。
 だから、私はいまの憲法9条が、たとえ、それがアメリカの意向の強いものとしても、いいじゃないかと思う。だって戦後70年間も、戦争もやらないできたのだから。

 しかし、「『普通の国』になりたい」という声が出始めた。「普通の国」ということは鉄砲もって、何かあったときは、アメリカについて行って戦争をやるということでしょうか。他の国から見ると、「何だ、日本もわれわれと一緒か」と思うでしょう。しかも、アメリカの後ばかりを追って、尾っぽを振ってたら、日本が日本でなくなる。いま安倍政権はそんな国を目指しているように見える。これは根本的に間違っている。

 日本という国は、世界のどの国とも仲良くするんだということを、国民もハッキリと自覚して、戦争には決して近寄らない「特別な国」なんだという方向にもっていくべきだ。
 「特別な国」とは、戦争は絶対にしない、武器の輸出もしない国のことです。大体、人殺しの道具を自分で売っておいて、「私は戦争しない」じゃ、通用しない。

 もちろん、それでも攻撃してくる国があるかもしれない。だから、それは専守防衛で対応すべきで、その力だけはつけておけばいい。何も憲法を変える必要はない。
 日本が本当に世界の中で、「特別な国」として尊敬されるためには、世界のあらゆる国と仲良くしなきゃいけない。そのための平和憲法だ。その憲法を、どうしても守らなきゃいけない。これは日本の宿命です。

 「力対力」の発想で、アメリカの尾っぽを追っていたら、「日本はどこへ行ったの?」と思われるでしょう。これは、国の生命線に関わるんです。だから、私はどうしても憲法の3原則を守らなきゃいけないと思っています。

 今、日本がやらなきゃいけないことは憲法改悪じゃない。基本的人権をどう守るかでしょう。
 ところが国会では、特定秘密保護法が成立したのに加えて、この間廃案になった共謀罪を衣替えした形で「テロ準備罪」の名前で動こうとしています。こんな国にしちゃイカン。

教育こそすべてのベース

 日本が戦後、今のように発展してきた原動力は国民の教育でした。
 ところがいま日本は、教育が十分行われないような国になりつつある。いまこそ日本は「教育国家」を目指すべきです。この意味でも「特別な国」にしなさいということです。
 これまでは日本人はほとんど全員と言っていいほど平等に近い形で教育されている。ところが、今、政府が公的教育として使っているお金は(GDP比で)世界の最下位に近い水準まで低下しています。なのに文科予算は全然増えない。
 例えば大学行こうと思ったら、ものすごくおカネがいる。いい学校に行こうと思うと、小さいうちから塾に行かなくては難しくなっている。
 私が言っているのは、大学入りたい人は全員入学でいい。そして、勉強できない学生はしょうがないけど落とす。そして、入学させた学生は全員海外に4カ月以上、留学させろということです。
 そのためにかかるお金は大した金額ではない。戦闘機1機が何百億円するそうですが、この戦闘機1機を買うお金でたくさんの学生が海外留学できるのですから。
 この留学で、世界中のあらゆる国の人びとと話ができるように、若い人を育てるのです。そうしたら、こうした若い人の中に真の愛国心が芽生えます。そういう若者に育て上げるために、政府はもっとお金を出しなさいということです。

必要な「機会の平等」

 大事なことは、弱い人の立場、あるいは、力がない人をどのように助け合って、あるいはその人たちが生活できるようにしていくか。要するに、国民の幸せ。
 国民っていうのは金持ちじゃない。しかし、金持ちは必ずどんどん裕福になる。だから、世界中の下流の36億人とたった62人の大金持ちの資産の額がいっしょだっていう議論が出るわけです。
 私は『心 クリーン・オネスト・ビューティフル』(毎日新聞出版)という本を書きました。あれは「商人道」というか、商売、資本主義における倫理について書いたものです。
 資本主義社会というのは、放っていたら、弱肉強食で強いものが勝って、弱い者が負けるんですよ。ジャングルといっしょです。
 それではいけない。取引、経済というものの根底には、倫理がなかったら、ダメなんだ。それが忘れ去られて、今はカネ儲けばっかりです。

 要するに、「パンはペンより強し」で、思想や哲学では動かない。思想や哲学の上にパンがある。それをどのように抑えていくかということが非常に大事なことだ。
 大事なのは、国民の幸せであり、弱い者はちゃんと生きられるような世界をつくることです。そのためにも真実を語らないといけない。

 ところが、弱い者を騙して、もっと弱くするような政策ばっかり行こなっている。実質的には。例えば、40%を占めはじめた非正規社員の人の生活を少なくとも、中間層の人たちと同じような水準にするためにはどうしたらいいんだということを考えなくてはいけない。一人親家庭では、お母さんが食うや食わずで働いて、一日何百円で家族が生活する。他方、一日何万円もで生活する人もいる。ものすごく不公平です。
 それをとってつけたように、「一億総活躍社会」とか言ってもダメだと思う。
 そういう弱い人の立場、あるいは、力がない人をどのように、助け合いながら、その人たちが生活できるようにしていくか。「国民の幸せ」と一言で言いますが、国民は金持ちだけじゃない。金持ちは放っておけばいいんです。
 いま、必要なのは、「機会の平等」です。それは日本の社会も、世界中でも同じです。それがないから皆怒っているわけだ。だから、トランプみたいな人が出てくる。

日本は平和産業で生き残れ

 日本がこれから生きる道は、教育に裏打ちされた、平和産業です。 その1つは農業だ。農業は、神が与えた3つの恵み、水と土と光なんです。日本には世界に誇れる、農業に恵まれた土壌がある。当然、その代わりに台風などの気象条件のリスクも高いが。リスクもあるけれどもせっかく恵まれた土壌があるわけだから、それを最大限利用する。
 もう1つは、観光。海外にはない四季あふれる自然に恵まれています。観光に力を入れるためにはどうするか。
 やっぱり、原発はよくない。事故を起こした福島原発もいまだに汚染水問題さえ解決していない。安倍首相が言う、アンダーコントロールどころじゃない。最近の雨で地下水が地上にあふれ出ている。技術的にも全然ダメだ。
 最後のもう一つはやっぱり、技術だよね。「メイド・イン・ジャパン」というこのブランドは、日本の労働者が素晴らしいから成り立っている。日本の機械だけが素晴らしいなら、世界どこでも同じモノができるはずだが、できない。なぜなら、労働者が機械を動かしているからだ。労働者が機械を動かしているということを、われわれは考えなくてはいけない。日本の労働者がつくってくれるから、世界で信用があるんです。
 国民の教育をベースにした技術、これがあって、初めて日本の商品が世界の信頼を得られるわけです。
カネで買えない最大の資産は何か。人間だ。人間こそが最大の資産。
 それと「信立たずして国あらず」だ。「信用と信頼」だ。世界の信用、信頼を得てこそ、日本は「特別の国」と言えると思うんです。
 そういう部分で日本が「特別の国」になれば、日本の存在意義は、中国がいくら身体が大きくなっても、日本に追いつけない。

日中正常化45周年を機会に

 来年、日本と中国は国交正常化45周年を迎えます。私はこれをきっかけにして、政府間も、民間も、全国368ある姉妹都市の自治体間でも、文化とか卓球などのスポーツ、あらゆる分野で日中間の交流を大きな流れにしたい。 
 ちょうど、来年に習近平政権は2期目を迎えます。彼の2期目のオープンを、この日中国交正常化45周年のお祝いでスタートして、いろんな交流を深めれば、だんだん日中関係も良くなります。

 日中間で、戦争なんて、私はまずないと思う。させてはいけない。
 島の問題で戦争はないだろうけど、日本の国土、領土というのは「あげますよ」と絶対に言っちゃあいけない。
 しかし、引っ込めさせるのは、「力対力」ではない。力と力で、やろうというのは大間違いです。
 すべての紛争を平和的手段により解決し両国が武力による威嚇に訴えないことを確認した1978年の日中平和友好条約があるじゃないですか。それはキチッと守らなきゃいけない。日中は永遠に「引っ越しできない」隣国です。

【にわ ういちろう 1936年、愛知県名古屋市生まれ。伊藤忠商事会長・社長。2010年6月、初の民間出身の駐中国大使就任(12年12月まで)。現在、日本中国友好協会会長、グローバルビジネス学会会長。著書に「北京烈日―中国で考えた国家ビジョン2050」(文芸春秋)など多数。 文責編集部】

【編集部注 砂川事件】1955年、在日米軍は日本政府に対し、ジェット爆撃機の発着のため立川飛行場の拡張を要求。関係農民は絶対反対で、砂川基地拡張反対同盟を結成、さらに砂川町議会も反対を決議し闘いに加わった。東京地評・三多摩労協など労働組合と社会党、全学連の学生などが支援に加わった。米軍は68年、立川基地拡張をあきらめ、77年、立川飛行場は返還された。
 闘い途中の57年、デモ隊の一部が基地内に入った(砂川事件)として7人が日米安保条約に基づく「刑事特別法」違反で起訴された。東京地裁の伊達裁判長は「米軍駐留が憲法違反」として被告人全員に無罪を言い渡した(伊達判決)。その後、最高裁はこの判決を取り消したが、その過程で田中耕太郎最高裁長官が米国側と秘密協議するなどが発覚している。(詳しくは、本誌4月号掲載、土屋源太郎氏による「砂川事件再審請求棄却に抗議する」を参照)

【編集部注 ペロポネソス戦争、ツキジデスの罠】 ペロポネソス戦争は、紀元前431年から404年。ギリシャの覇権を争って、アテナイ中心のデロス同盟とスパルタ中心のペロポネソス同盟との間での戦争。スパルタが覇者となった。ツキジデスは、紀元前400年頃のアテナイの歴史家。ペロポネソス戦争の歴史を記述。その中で、「新興の大国は必ず既存の大国へ挑戦し、既存の大国がそれに応じた結果、戦争がしばしば起こってしまう」との傾向性を見出した。この傾向性を「ツキジデスの罠」という。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする