2015年11月11日国民連合:神奈川 丹羽宇一朗 講演会要旨

アメリカ偏重をやめて、中国、世界と友好を

 日本はこれからどうやって生きるか、申し上げます。世界の人口が1600年は3億人、1700年には6億人、1800年に9億人になりました。ちょうどその頃、マルサスが「人口論」で人口が急速に増えると言った。そして、20世紀に入ったら、16憶人になり、21世紀になって、64億人になった。今、73億人です。毎年、7千万とか8千万人ずつ人口が増えている。アフリカはこれから約10億人増える。30年たったら、20億人に倍増する。40年経ったら、世界は28億人増える。一般的にいえることは、地球は100億人くらいが限度、100億人くらいしか食べさせることができない。また、気候、農地、水、エネルギーで、200億人はとっても住めない。環境を汚して、人間ほど汚い動物はありません。水も飲む、食べ物も猛烈に食べ、環境を破壊します。
 さて、30年、40年経って、人口100億人としたときに、皆さんのお孫さんは40歳です。そのとき、100億人を支えるだけの食料はあるか。水はあるのか。エネルギーはあるのか。どうなると思います。貧乏人が死にます。強いものが残る。医療介護も成り立ちません。国民保険もやれるわけがない。医療介護も、7~8割は生きられない。で、いくらだったら生きられるか。物価が上がらないとして月額15~17万円では24時間介護ができない、死にます。ある程度、歳を取って病気になると痰がつまる。吸引しないと生きられない。24時間家族で介護はできません。政治家は「家族で老人を介護するのがいい」と言う。老人にしてみれば、自分の家で死にたいけれど死ねない。誰か24時間つきますか。8時間労働、3交代そんなことはできません。だから、弱い貧乏人が死ぬことになります。
 さて、世界の食料は一体誰が供給するのか。金持ちだけが生きられる。アフリカに20億人いたって、誰が食料を供給しますか、アフリカでは簡単に100%食料供給はできません。農業なんてそんな簡単なもんじゃない。結構知識がいるし、水も必要です。地球にある水、14億立方キロメートルというんだけれども、その中で日本は60%食料を輸入していますが、これを全部日本でつくったら、1年で琵琶湖の水がなくなります。1トンの穀物をつくるのに、千トンの水がいります。牛肉は2万トン、豚肉は6千トン、鶏は4千トンになる。肉というのは猛烈に水を使います。
 日本はアメリカの後についていって、食べ物が自由に買えなくなったときに、アメリカは自給自足できても、日本はできません。そのとき、「アメリカさん、助けて」といっても、アメリカ国民が優先され、「日本はその他」となります。日本人は日本の食糧自給のことを考えなくてはダメです。今の「アベノミクス」では「トリクルダウン」と言って、金持ちのカネが余ったら、貧乏人に回ってくると言いますが、真っ赤なウソです。アメリカが日本におこずかいをくれるなどということはありません。食料でも同じです。
 要するに、日本は、どこからも、輸入できるように世界中の全ての国々と平和に暮らさなきゃダメです。ロシアみたいに経済制裁受けたら、ひとたまりもありません。「あんな、国に輸出できるか」となったらどうするのか。私が言いたいのは、中国とはより一層、本当に仲良くしないと、やっていけないんです。100億人いて、その日本と中国が争って、食料を取り合い、「中華民族だけいい」とか「日本だけいい」もあり得ない。日本、中国、韓国、この極東の三国は仲良くするしかない。尖閣も南の島も関係ない。ぶん殴り合って、取り合ったって、何の役にも立たないんだから、仲良くする以外にありません。
 だから、今皆さんに申し上げたいのは、世界中の皆さんと仲良くする。自由と平和。これは日本が持ち続けなければいけないことです。好き嫌いじゃない。これから生まれてくる子どもたち、かれらに将来のすべての罪悪を押し付けてはダメです。皆さんは死んでいくわけです「後はワシャ、知らん」では無責任じゃないですか。日本と中国が仲良くして、韓国とも仲良くして、アジアとも世界中と仲良くして、そう言う中で若い人にバトンタッチをしていく。そういう気持ちで、日中関係をつくらなければいけないと思います。後は討論で質問を受けます。とりあえず、ここで失礼します。(拍手)

 ここに紹介したのは、2015年11月11日、横浜市内で行われた「神奈川から東アジアの平和を拓く」講演会の講演要旨です。講演会の概略は、月刊『日本の進路』11月号をご覧下さい。

【講師プロフィール】
  1939年、愛知県生まれ。62年3月名古屋大学法学部卒業、同年4月伊藤忠商事入社、主に食料部門に携わる。98年同社社長、04年会長に就任、10年6月~12年12月、中華人民共和国駐箚特命全権大使。13年4月早稲田大学特命教授に就任。2006年10月~08年10月経済財政諮問会議民間議員、07年4月~10年3月地方分権改革推進委員会委員長。主な著書に「人は仕事で磨かれる」文藝春秋刊、「新・ニッポン開国論」日経BP刊、「負けてたまるか!若者のための仕事論」朝日新書刊、「北京烈日」文藝春秋刊、「人を育てよ」朝日新書刊、「中国の大問題」PHP新書刊。

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